景気と人口(1)

同業者間の人に会うごとに「どうですか、景気は?」が習慣語になっている。
ここ数年来、繊維関係のメーカーが激減して業界の将来を憂える時代になった。
原因は消費の落ち込みと、安価な中国製品の氾濫にあるのは言うを待たない。
繊維は他産業に較べて特許、実用新案などの知的所有権が少なく国際競争力に
立ち遅れてしまっている。景気は時代背景との関連性は顕著だが繊維関係では
戦後は二度の大波があった。50年代の高度成長と90年代のバブル景気の時に
波に乗れた者が勝ち、乗り遅れた者が脱落した。栄枯盛衰、世の習いというが
平成の始めの大納会に38,915円につけた平均株価の景気も今や氷河期にある。
プロ野球のオーナーも戦後の映画華やかなりし頃の、松竹、東映大映が消え
電車で通勤する人の多かった時代の国鉄、南海、近鉄が脱落し今はIT産業の
ソフトバンク楽天が新しく参入して変貌する時の流れを象徴しているようだ。
先の見えない景気下降は、また人口減少とリンクしている。来年からの日本は
人口が減る計算だが、その分だけ消費が縮んでGDPが必然的に下がっていく。
生産が落ち、需要が落ちデフレスパイラルが進めば、やがて生活に響いて今の
豊かな暮らしも続くはずが無く節約の切り詰めと、諦めざるを得ないだろう。
国は借金まみれで景気が良くなる要素がまるでなく、どんどんと減少していく
未来を担う若者が、どのように返していくのだろうか。そして増えるばかりの
年寄りが年金の減少でどのような暮らしになるのだろう。年金は自分が積み立てた
お金が歳を取って返ってくるのではない。現在働いている若者のお金を頂戴して
しているわけで、若者が減ればそのぶん減り、まして働き手の20代の年金の
納付率は50%、30代で35%では、年金制度そのものが崩壊するのは必至だ。
景気の建て直しは新しい産業に目をむけ、古いものを切り捨てる勇気と政策が
必要で政治も経済界も褌を締めなおす時は待ったなしだ。