内憂外患(19)

パリの移民街で起きた暴動がフランス全土に広がった事件は植民地主義時代の
後遺症としか思えないが、世界で最もお洒落な文明文化を誇るフランスだけに
その衝撃は強烈だ。移民してきた人々の中にも優れた人物も多くシャンソン
エンリコ・マシアス、サッカーのジダン、日産のカルロス・ゴーンなど世界を
リードしてきただけに今回の事件はなんとも複雑な思いに駆られる。フランスの
国旗のトリコロール(三色)は「自由・平等・博愛」の共和国精神の象徴だが
その融合のカタチに出来ない今の姿は、建前通りにいかないジレンマがそこに
あるのだろう。人種や宗教で差別されないと言う法が、かえって貧しい人たちの
不満が爆発して今回の騒動になった。自由・平等と云う名の悲劇かもしれない。
世界の多くの国は人種間の問題を抱え、テロや内戦の原因の大半といっていい。
日本もかつて朝鮮半島を併合して民族協和を謳ったが人種、文化の違う人たちと
同じ国家を形成するには無理が多すぎて結局上手くいかなかった。たとえ戦争が
無かったとしても互いの違和感や憎しみは変わらないだろう。帝国主義時代の
昔にやったことが、今もなお恨みを残しているのは辛いところだ。異文化との
付き合いがいかに難しいかを今回の事件は物語っている。わが国はほとんどが
一民族、一言語、一文化、一宗教等々で恵まれていると思うが、少子高齢化
進むこれからの社会で外国人労働者の受け入れ問題の議論が多々あるが慎重に
考えるべきで対岸の火事ではないことを肝に銘じたい。