内憂外患(35)

若い頃に見た映画で黒澤明の「羅生門」があるが、芥川龍之介の「藪の中」を
題材にした物語は、一つの事件に関わった若い夫婦と盗賊の三人がそれぞれに
違った証言をして真相が分からないままに迷宮化していくのが画かれているが
人は誰もが欲望を持ち自分を正義化していく心理をとてもうまく掴んだ作品に
世界の映画界は絶賛した。真相は一つのはずなのに三人三様の言い分の自分が
有利のように語る醜さは、最近のマンションの耐震強度問題の参考人質疑に
似て、建築主も検査機関も施工主も、その責任感のなさは見苦しいばかりだ。
肝心の一級建築士は出てこないしその上政治家の関与も噂されているようだ。
日本人の道徳心はどこへ行ったのか、そこまで堕ちたかといわざるを得ない。
責任のなすりあいは醜いが、最大の被害者である居住民に対する補償や弁償に
ついては解決の糸口も見出せないまま弁明ばかりを聞かされた怒りは大きい。
言うまでも無く家は人生で最も高い買い物だ。大根や魚を買うのとワケが違う。
最近では悪徳業者がはびこっているが、せめて甘い口裏に乗らない事、安い
物件には注意する事、会社の信用性を見抜く事ぐらいは留意して掛かりたい。
羅生門」は室町末期の退廃とした荒れた時代が背景だが、現代の世相は
当時の状況に近く道徳観の薄れた環境は歴史が繰り返されているのだろうか。
これは重大犯罪だから警察も乗り出してほしい。