内憂外患(50)

耐震偽造問題はいろいろな課題を投げかけた。今回の事件は明らかに人災だが
災難の遭われた人にとっては天災かテロに遭遇したものと同じことがいえる。
ここ数年上昇気分だったマンション業界も一気に冷えて売り上げは落ち込み
建設の株価の下落も自業自得の部分も影響しているのは間違いなさそうだ。
昔、といって戦前のことだが“家”に対する概念が今とは相当に違っていた。
都市部に住む人たちのほとんどが借家だったし持ち家など考えもしない時代が
それまであった。かつて“家”とは住むための道具であり家族構成によって
独身→結婚→子供→三世代と、家を住み替えていくのが普通のライフだった。
戦前の借家状況を調べてみると東京では7割、大阪では9割の所帯が借家に
住んでいた。町を歩くと「かしや」の張り紙が多く見られたし家を借りる事は
日常的に行われて、考えようでは庶民の知恵の一つであったのかもしれない。
不動産を持つことの憧れは戦後に出来た一つの風潮なのだろうか。インフレが
進み土地の値段が急騰している時は借金をして利息を払っても買えば儲かった。
けれど土地神話は消えてデフレの現在では、持ち家を買うことは一生の大半を
住宅ローンで苦労し家族構成が変わっても住み替えの自由を自ら束縛している。
耐震偽造は起きるべきして起こったと思う。来年から人口減少化して不動産は
数字の上からは満ち足りて、業者は売るために消費者を騙した自殺行為だった。
人生のなかの資産とはなんだろう。考える時が来ている。
「人生には三つのものがあればいい。希望と勇気とサムマネー」C・チャップリン