隠居の独り言(45)

母は5年前に92歳の天寿を全うしたが人生の三分の一にあたる約30年を
スモン病で寝たきりの生活を強いられた。スモンは胃腸薬のキノホルムを
飲んで起きる病気で運動神経や視神経が侵される症状だが発生した当時は
原因が分からず解明された時は約10年の歳月が流れて、ために全国的に
患者が多発し訴訟裁判も長期化して家族たちが大変な苦労と時間の浪費を
掛けて国と医師と製薬会社を相手に戦った。けれども身体は元に戻らない。
思い出すのも腹立たしく悔しい事だったが薬嫌いになったのはそれからで
今は医者から薬を出されても少し飲んで止める事にしている。繰り返すが
発生して解明された約10年の長い歳月はなんだったのだろうと考える。
薬の副作用の怖さは人体実験のなにものでもないと思うと、自分の体は
自らの免疫力を信じて生活習慣病に気をつけるのが一番の処方箋と思う。
歳を取ると「風邪引くな、転ぶな」が当面の注意事項だろう。風邪引くと
細胞の老化で免疫力も低下して肺炎など起こし死に繋がる恐ろしい結果と
なりかねない。転ぶのも骨の密度が少ないので骨折する率がとても多い。
人混みの中に近寄らない。家の中はいつも整頓する。少しの配慮が病気や
怪我から救われるので老人はもとより周りの人も気をつけたいものだ。
年寄りは身体機能が著しく低下しているので病気や怪我の後遺症なので
寝たきりや認知症になるケースが多く、本人も辛いだろうが周りの人の
苦労も並大抵のものではない。母の闘病生活を思う毎に母が身を持って
教えてくれた苦しい教訓を悟るのが子としての孝行と思う。 つづく