隠居の独り言(139)

先週、仕事の帰り道ラジオで聞いた番組で老人ホームの音楽慰問の話をして
いたが、某放送協会の調べでは、お年寄りが好む童謡唱歌のベストスリーは
「赤とんぼ」「故郷」「赤い靴」なのだそうで、さもありなんと実感はしたが
戦前に売れたレコードの童謡は「かもめの水兵さん」「かわいい魚屋さん」だ
そうで、実際に歌っていた歌と子供のために教えた歌との多少の世代の差は
とても参考になって面白かった。「歌は世につれ世は歌につれ」の言葉通りに
例えば現在80歳代と70歳代の子供のころ歌った歌は、少しは違うだろうし
時代背景もヒトコマ違っていた。ホーム慰問の時によく歌う曲に「故郷」が
あるが「兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川」はかつての日本の原風景だが
今はそれが無くなってしまった。昔の「故郷」は変わらないものだった。
営々と築き上げた母なる大地はいつ帰郷しても景色も環境も変わらないのが
原則で心の支えでもあった。その原風景が目立つほどに変わってきたのは
高度成長時代で農村では機械が農作業を変え、馬も牛も消えて、替わりに
ラクターが田んぼを這い回っている。農薬の普及は鮒や泥鰌を駆逐して
トンボや蛍も姿を消した。車社会はあぜ道をアスファルトの道路に変わり
用水路の両岸がコンクリートの直線構造は水生動植物は生きてはいけない。
童謡唱歌は遠い昔の郷愁で歌い継がれていくだろうが現実に今の小学校では
その類はなく、まさに「歌は世につれ世は歌につれ」なのだろう。