隠居の独り言(161)

大人のお盆休みも子供の夏休みもそろそろ終わりだが、この暑い夏の盛りに
休めない職業の人も多いはずでサービス産業、特別公務員の警察、自衛官
季節物を取り扱う業者は秋冬物の生産に7−8月頃が一番の働きどころだ。
逆に正月前後が春夏物生産に忙しいのは言うまでもない。つまり一般の人が
長期休暇を取って休養やレジャーを楽しんでいる時こそカキイレどきになる。
毎年のスケジュールだが素材やデザインの決定から納品まで納期は容赦なく
決められて、それを果たさないと品物が店頭に並べられない。だから忙しい
戦争のような日々は暑い夏の盛りと凍てつく厳冬にあたる因果な商売と思う。
昔の諺に「なまけものの節句働き」というのがあって世間一般が長期休暇を
楽しんでいる時に忙しそうに働いているさまは少し気が引けるとみえ職人は
自嘲気味で毎年の恒例に頑張っている。このパターンは今も昔も変わらないが
自分も子供たちが学校へ通っている頃、夏休みに海か山など何泊かの旅行へ
連れてやりたかったが、それが出来なかったやるせない気持ちと家族への
後ろめたさはこの年になっても思い出されて気持ちが痛む思いがする。
今では仕事も人に任せられるようになり多少の余裕も生まれて子供や孫達を
連れた旅行をときどき楽しんでいるがこれも過ぎし日の罪滅ぼしなのだろう。
といって今年も忙しい日々が続いている。最近は購買層が多様化して個性的な
デザインの注文が多くそれだけに点数が多く個数単位が少なくなり、コストが
掛かる割には利益に繋がらないジレンマに陥っているが、商いは、飽きないと
自問自答しながら今日も頑張っている。秋風が吹き始めて虫の声が途絶える頃
閑古鳥の声が聞こえてくる。