隠居の独り言(193)

商談がまとまり注文書が送られてくると「よかった!今夜は一杯いきましょう」
会社勤めの頃には社長はじめ同僚たちは待っていたように酒場へ乗り込んだ。
ところが下戸はそれが苦痛で困ったものだ。下戸は人生の楽しみは半分と言う。
祖父も親も呑ンベーだったのに倅のDNAがどこの組み合わせを間違えたのか
下戸に生まれた不運は折角商売が上手くいったのに祝杯すら挙げられないのは
我ながら情けない。アルコールは若い時から駄目で「お前は付き合い悪い」と
人様から蔑まされてきた。勿論酒は百薬の長と言われるまで無く分かっている。
晩酌一合、ビール一杯、体にはいい事は百も承知・・食欲の秋はお酒の味もまた
深まるという。つまみを食べながら酒を美味しそうに飲んでいる人々を見ると
飲めない自分がとても情けなくて若い頃には随分と訓練もしたがたった一口で
ヘベレケ酒乱状態になるのは話しにならず恥ずかしくて酒の修行は断念した。
それでも何かの会合や冠婚葬祭などお酒の席では飲める振りして付き合うのも
なかなかの気苦労と忍耐が必要でその憂鬱さは下戸の身でないと分からない。
新首相の安倍晋三も下戸と聞くが「飲んだふり」がお上手らしくて頼もしいが
晩餐会の席上でシャンパンの乾杯のあとの始末はどうなさっているのだろう。
諺にも「下戸の建てたる蔵は無し」で酒を飲まないからって必ずしも金を貯めて
蔵を建てたという話しは聞いた事がない。げんにそう言うものだとも思う。
いいことは最近話題の飲酒運転は絶無だからだ。自慢じゃないがハタチの時に
運転免許を取得し毎日のように運転して50数年、無事故でかすり傷も無い。
私の唯一の勲章だろう。といって老いていく身だから気をつけないといけない。
「酒や煙草の楽しみ無しで長生きしてる野暮な奴」  駄作
私も野暮な奴の一人なのだろう。