隠居の独り言(212)

長年に映画を見る機会を失っているが、是非見たいものが近々封切りされる
二本がある。一本はクリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」で
もう一本は藤沢周平原作・山田洋次監督の「武士の一分」を期待している。
硫黄島からの手紙」は太平洋戦争末期で最大の激戦だった硫黄島争奪戦を
描いた映画だが日米それぞれに2万人以上の犠牲が出た正規軍同士の決戦で
一ヶ月以上にかけた激しい戦いは、長い歴史の戦争史上にもおそらく最後の
国家と国家の意地をかけた軍人だけの死闘だろう。日本軍は制空権・制海権
奪われ圧倒的な戦力の敵をものともせず孤島の劣化の環境の下で一丸となって
戦い一方米軍も日本本土攻撃のための最後の拠点の島を奪うため死に物狂いで
攻め立てて日本兵アメリカ兵も死力を尽くした戦いも1945年3月に日本軍
守備隊2万人全員が玉砕して島が陥落したが、その後に米軍は日本本土空襲を
本格的に行い民間人多数が犠牲になり広島・長崎の原爆投下を最後に敗戦への
道筋になった。小学校高学年の頃に太平洋戦争末期を経験した自分にとっても
当時の新聞などで知って硫黄島攻防戦は悔しくて忘れられない思い出一杯だが
この映画は日米双方の立場で描かれているらしいが、果たしてアメリカ映画の
製作で日本の武士道にも配慮されて公平に描かれているのかが最も気にかかる。
「武士の一分」は木村拓哉檀れい笹野高史坂東三津五郎などが出演する
藤沢周平の時代小説「隠し剣秋風抄」が舞台だが周平の本は夢中に読み漁った
時期があって仕事で出張の途中に彼の出身地山形県鶴岡市に行った事もあった。
市井に暮らす庶民や下級武士を描く文章や筋書きは他士の追従を許さないが
藤沢文学がそこに燦然と輝いているようで何度読み返しても新鮮さを感じる。
「武士の一分」は主人公三村新之丞を木村拓哉がどれほど原作に忠実に演技
出来るのか見ものだ。いつか前に原作も監督も同じの「たそがれ清兵衛」が
上映されていたが小説とイメージが違う気がして見に行く気がしなかった。
今回がなぜか見たいのは母がファンだったキムタクのせいかもしれない。