隠居の独り言(218)

火曜日に新聞のTV欄を見ていたら夜8時からNHKの歌謡コンサートで
古賀政男の特集番組を放送されるというのでじっくりと見ることにした。
まずは森進一の「影を慕いて」からはじまって川中美幸「人生の並木道」
坂本冬美「誰か故郷を想わざる」島津亜矢「柔」山川豊「人生劇場」そして
小林幸子が「東京ラプソディ」を歌い最後にビデオで古賀政男本人の指揮と
明治マンドリンクラブの伴奏で藤山一郎が「丘を越えて」を熱唱していた。
古賀政男の曲は私のギター弾き語りの原点だ。故郷から上京し戦後間もない
昭和20年代の頃はラジオから流れていた古賀メロディーは当時の荒廃した
世相の人たちの心を癒して明るさと希望を与えてくれた身体のビタミン剤の
ように芯から暖めてくれた。小僧の苦労があっても音楽はいつも友だった。
私はなかでも近江俊郎の「湯の町エレジー」が大好きでギターのイントロの
艶かしさ、ろうろうと歌う近江俊郎の美声には少年の気持ちを痺れさせた。
当時は夜になると二階の窓や物干しなどでギターを弾く若者がいたものだ。
古賀メロディーは日本人のこころを揺さぶる独特な節回しで、聞くたびに
当時を偲び「歌は世につれ、世は歌につれ」を実感できる曲そのものと思う。
古賀政男は作詞もこなした抒情曲も多いが「まぼろしの影を慕いて雨に日に
月にやるせぬ我が思い」など恋人の幻影を思慕する歌詞の文語的な難しさは
最近の若い人には受けずメロディーとともにやがて廃れていくのだろうか。
TVを見ながら思うのは最近の歌手が歌っていても何かしらそぐわないのを
感じるのは古賀の生きた時代を背景に作られた歌だけに再現は難しいのだろう。
今は時々老人ホームの慰問演奏でも古賀メロディーは受けるが入所されている
方々の年齢から測れば今の老人に最も癒される音楽の一つに違いない。