隠居の独り言(222)

寿司のにぎりで一番の味は誰が何といってもマグロのトロに軍配が上がる。
「え〜、いらっしゃい!」粋な声に誘われて、寿司屋のカウンターに座ると
まずトロを注文する事から始まる。すきっ腹と乾いた舌にはトロのにぎりの
感触が何とも表現し難く口の中の味覚を120%満足させてノドを通すのが
勿体ないぐらいだ。ところで最近は世界のマグロの生息数が激減したうえに
世界的に需要が増えてこの高級食材の資源はピンチを迎えているという。
水産庁は刺し身向けマグロの10〜12月の卸売価格が3年ぶりに前年を上回り、
前年同期より11〜20%高い「強含み」で推移するとの需給見通しを発表した。
天然ものが減るのは寂しいが、これからは養殖に力をいれなければならない。
マグロの養殖の難しさはこの魚は非常に敏感で水族園でも写真のフラッシュで
水壁にぶつかって死んでしまう。和歌山県串本市の近畿大学水産研究所では
約30年に及ぶ高級魚の養殖の歴史は苦闘の連続だったというが世界で初めて
「完全養殖」に成功したという。しかもトロの部分が90%にも達していて
更に量産が進めば値段も天然マグロよりも安くてなって食卓に上がるだろう。
現在では通常店頭に並んでいるのは大半が輸入もののマグロで捕獲したのを
数ヶ月間養殖して脂を乗せた蓄養マグロと呼ばれるもので最近ではほとんど
これが市場を支配していると言う。どちらにしてもこれからは世界のマグロ
市場の減少は必至で「完全養殖」に期待が高ぶってくる。養殖ではマグロの
他はタイ、ウナギ、クルマエビ、フグ、ヒラメ、ブリ、ホタテなど多数だが
それでも日本人の食べる魚の半分は輸入に頼っているのが現状では頼りない。
牛や鳥の病気の関連もあって世界の食文化は変り水産物に頼る率は高くなる。
幸いに日本の200海里経済水域は世界の8番目の広さを持っているのだから
有効に生かして水産物自給率100%を目指したい。