隠居の独り言(231)

いまから65年前の昭和16年12月8日の朝早く大本営発表で「帝国陸海軍は
本日未明、太平洋上において米英軍と戦闘状態に入れり」とのニュースが流れ
日本中が沸き立った。小学校3年生の子供にはただ大変なことになったな、と
思い緊張感でみなぎっていた。日本は明治の日清日露の勝ち戦から一次世界戦、
満州事件、支那事変などを経て半世紀以上の常勝日本軍の勇姿を聞かされれば
たとえアメリカ・イギリスが一流国といえども負ける気がしなかったし緒戦は
真珠湾爆撃、香港陥落、マレー半島上陸、マニラ占領、ジャカルタ攻略を進め
シンガポールからビルマまで東南アジアのほとんどを半年間で攻め落とした。
日本一国でアメリカ・イギリス・オランダ・フランス・中国を相手の戦果には
小学校の子供には神がかりと思えたし軍国少年に染まったのは無理もない。
いまにして思えば後悔や反省がどうのこうのと、やかましいがあの時はあれで
仕方がなかったのだろうか。明治以来の歴史が連戦連勝だったら誰でも心に
驕りが出て来てそのまま突っ走ってしまう。なにも軍人だけが悪いのではない、
日本人の全てが、いけいけどんどんで何の迷いもなく世界中を相手に戦った。
今に思うとどうせならその勇敢な精神力と一致団結の大和魂に天晴れだったと
褒めてやってもいいのじゃないかな。勝ち負けは時の運、それに日本は賭けた。
誰が悪いのではない。世界の歴史の必然性があの大戦に結びつき人々や国家が
傷付き淘汰されていく。大戦が終われば昨日の敵は今日の友、仲間だった米ソが
冷戦をして、敵同士だった日独米が軍事同盟を結ぶ。国家間の仲間が変わって
再び戦火があちこちでくすぶり人間の愚かな欲望は後を絶たない。戦争の歴史は
また人類の歴史であると思う。 つづく