隠居の独り言(262)

今から二世紀前の1814年にナポレオン戦争終結とヨーロッパ全土の秩序再建と
領土分割をめぐりロシア、イギリス、プロイセンオーストリアローマ教皇国の
六カ国が集まりオーストリアのウイーンで開かれた。いわゆる「ウイーン会議」で
各国の利害と欲望が対立して、最初の会談から数ヶ月経っても遅々として進行せず
「会議は踊る、されど進まず」と揶揄された。ところがナポレオンがエルバ島
脱出したというニュースが入るやいなやナポレオン以前に戻すという保守的な線で
各国が妥協して終わるが、映画にもなり粋な音楽も生まれた優雅な時代とは違って
現代の六カ国協議はそんな生易しいものではない。むろん北朝鮮が核やミサイルを
放棄して拉致を解決すれば終わりだが、北朝鮮金正日体制の存続には核の保有
唯一のカードで放棄するはずは絶対になく、中国やロシアの国益は現体制の維持で
北への援助は続けるだろうし、韓国では「太陽政策」とやらで一線を画している。
アメリカもイラクアフガニスタンを片付けるのに手が一杯で、対北外交の比重は
低いものになっている。北朝鮮は高笑いをいるだろうが悔しいけれど仕方がない。
各国もタテマエは北の核放棄だが、といって妥協点は無く堂々巡りの不毛の論議
もういい加減に止めたらどうだろう。ウイーン会議と今回の六カ国協議の共通点は
なかなか話が妥協しなかった事と、原因を作った人物がナポレオンと金正日という
個人の仕業が似ているが、決定的な相違点は北東アジアはヨーロッパの国々と違い
それぞれがまるで信じていないというところだろう。EUのような国家間の協調は
不可能だし、その辺りはヨーロッパよりアジアが劣る所以だ。六カ国協議の解決は
金正日体制の崩壊しかなく長い道のりかも知れないが地道に今の圧力を続ける方法
しか手の打ちようがない。協議に思うは日本がいつも蚊帳の外に置かれている事で
北朝鮮支援の事も米北会談で決められそうだし、いざ有事の時には米中だけ共同で
対処しようとしている。拉致の問題は遥かに遠く、北にその気にさせるには日本の
自衛隊が直接取り戻しに行くぞ!という強烈なメッセージを伝えなければダメだ。
国を守るとはそういう事だと思う。力には力で対応するのは国際的な常識のはずだ。
平和憲法だの不戦の誓いなど下手な平和主義が取り返しの付かない事になっている。
「歴史は繰り返される」というが人類が地球上に現れて以来何千年に亘って権力の
栄枯盛衰を繰り返しながら国の地図を塗り替えて今日に至っている。時間が経てば
北の崩壊は必至だが人類の戦争の循環は止まらない。