隠居の独り言(287)

戦国時代の城攻めには二通りあって、一つは力ずくで遮二無二強襲する方法と
一つは城を遠巻きにして水や食料を絶ち、城兵を飢えさせる方法など、直接に
戦闘はせずとも落城させる手があった。強襲する場合もその前に堀を埋めたり
障害物のイバラや櫓など取り払って城壁を乗り越えるが、その付近の城兵には
あらかじめ矢などで集中攻撃をして弱らせ、城縄梯子を掛けて一気に攻め込む。
攻城法としては最も原始的だが、また正攻法でもあった。かたや城を遠巻きに
囲んで持久戦に持ち込む方法は、人的被害は最小限に抑えられるが短期決戦には
向かない。どちらを選ぶかは諸々の事情はあっただろうが、攻城側のリーダーの
性格によって大いに左右されたようだ。織田信長上杉謙信などは短期決戦を
望み、武田信玄羽柴秀吉などは時間を掛けて敵を滅ぼした。篭城側にも作戦の
上手な軍師がいて、南北時代の楠正成の千早城や関が原の真田幸村上田城等は
有名だが城にまつわる攻防は時代の象徴的な絵巻物のように今に伝わっている。
NHK大河ドラマの「風林火山」は敵味方に分かれた山本勘助内野聖陽)と
武田晴信市川亀治郎)の対決シーンは勘助が命を賭して姿を現すが、そこは
晴信の気持ちの大きいところで軍略の優れた勘助の器量を自らのものにするため
彼を許す。史実はどうあれ後に天下を取った秀吉の若い頃の敵を許し懐に入れる
心の大きさは晴信に似ているような気がしてならない。戦国の世は騙し合いだが
武田信虎(仲代達也)は信州諏訪の諏訪頼重小日向文世)と同盟関係を結ぶが
それは束の間の平和でしかない。同盟は破られるためにあり誓文は紙切れ同然の
ようで諏訪の美しい姫君の由布姫(柴本幸)も時の大きな波に翻弄されていくが
彼女も戦国の女として、したたかに生きなければならない運命が待っている。