隠居の独り言(308)

四月に入って年度が新しくなり入学式や入社式が行なわれ若人達の新しい
節目の人生が始まった。心から祝福したい。新聞の一面には早稲田大学
入学式で昨夏の甲子園のヒーロー斉藤佑樹や卓球で活躍する福原愛たちの
入学証を手にした笑顔の写真が写っているが見ているだけでも嬉しくなる。
これからの若い人達は夢を持ち希望を胸に大きく羽ばたいてほしいものだ。
日本という大きな森に譬えれば君達は1本1本の苗木で今は幹も枝も細く
頼りない感じがするが将来の夢と若い生命力があれば逞しく育つのは必定!
凍える寒さも耐え難い暑さもこれから経験することだろうが長い人生には
病に倒れる事も挫折で絶望する事もくるものだが耐えてこそ大きくなれる。
森の中には1本として同じ木が無いようにそれぞれ自分の個性を作り上げて
頑張るのが生きがいというものだ。間違えてもやり直す時間はいっぱいある。
そしてみんなで美しい日本の森を作ってほしい。先輩からの切ない願いだ。
かつて60年前の少年も一応は大志を抱きながら兵庫県姫路から13時間の
夜汽車に乗って東京の土を踏んだ。今でも時々姫路駅のプラットホームに
立つとここが俺の人生の出発点だと胸がジーンと締まる思いがして涙する。
60年の歳月は後で思えば綱渡りの連続だが最中はさほどには感じていない。
青春時代にはさまざまな愚かなことがあったけれど過ぎてみれば良い夢も
悪い夢も身体に刻み込まれた自分の一部で波乱万丈も良かったではないか。
70代半ばになっても仕事や家族の雑事に追われているが、それはそれで
与えられた定めというものだろう。この先は「行雲流水」の言葉のように
何事にも流れに任せて自分流に余生を楽しみたい。