隠居の独り言(323)

子供の頃の夢は成長過程でさまざまに変わるが一つは医者になることだった。
小学校高学年の時にナタの先端で左薬指を切って何針かを縫う大怪我をして
治療してもらったが当時は健康保険も無かった時代で貧乏だった少年に医者は
「お代はいつでもいいんだよ」と言ってくれた言葉が今も脳裏に残っている。
先の戦争の最中で住み慣れた大阪から疎開で父の勤務先の東北の鉱山にいた。
10年ほど前に福島県白河市大工町にあった医院を訊ねてみたらマンションに
変わって住んでいた町の風景ごと思い出もまぼろしの夢のように消えていた。
最近は全国的に医者不足だという。それではもっと増やせばいいのにと思うが
医者になるためには素質と相当な学資が必要なため誰にもなれるものではない。
一人の医者を育てるのに数千万単位のお金が要るとなれば普通一般の家庭では
とても無理で儲かる医者の子供か、よほどのお金持ちでないと医者になれない。
学生から社会人になる時も物理数学系の学生は勉強に憧れはあっても収入面で
不安が残り金融関係や商社などに就職を決める優秀な人材が少なくないようだ。
資源の乏しい日本が将来に生きていくには理数学や科学技術立国でないと道が
無いのに、それを育てる政策があまりにも貧困過ぎるのではないか。お家芸
日本の今までの財産と技能が近い将来に途絶えてしまうのではないか。一方で
ゆとり教育のあおりで私立中学入試のために塾通いする小学生は増えて家庭の
教育費の格差による二極化が広がるばかりは拝金主義そのものではないか。
プロ野球の西武球団の裏金問題は経営の苦しさを訴えた会社が、隠し金を使い
非難を浴びているのは当然だが松坂大輔のようなドジョウを柳の下に狙ってか。
野球の卵には札束は積めても技術の卵には冷たい仕打ちが阿呆な日本の現状だ。
未来の日本にとってどちらが大切なのか大人たちは考えてほしい。