隠居の独り言(324)

ロシアのエリツィンが亡くなったが、また一人歴史の生き証人が消えた感じだ。
戦後のロシアの政治家のなかでエリツィンほど日本人が親しみを覚えた人物は
いなかっただろう。人のいいロシア人の感じで、おおらかな明るいお酒飲みで
少し間の抜けた人柄だったが失脚、復活を繰り返して、ロシアの共産主義から
自由主義への道を切り開いた先駆者でもあった。日本の北方領土も東京宣言で
はっきりと認めて日露平和条約の締結にあと一歩のところで持病の心臓発作で
倒れ話は途切れてしまった。後を受けたプーチンはあの姿格好に見る冷酷さは
以前のロシアに戻り日露関係は振り出しに戻ってしまった。ロシア人の一人の
健康が歴史を変えてしまった、と言っていい。そろそろ日本も北方領土問題を
諦めたほうがいいと思う。島が返っても現住するロシア人への補償問題や島の
インフラの整備などで膨大な費用が掛かるだろうしロシアに対しての何らかの
経済援助の請求は目に見えている。北方領土に限らず樺太南部、千島列島など
先の大戦のどさくさまぎれに開かれたアメリカ、イギリス、ロシアがヤルタの
秘密会談で決められたらしいが国際的にも認知されていない密約で強奪された
地方は戦後のサンフランシスコ平和条約でもどの国の所有とも謳われていない。
時間が経てば既成事実が固まって今では疑いの無いロシア領土となっている。
第二次日露戦争は不可能だが戦争で奪われたものは戦争で取り返すのが世界の
常識となれば交渉ごとでは島は二度と還らない。嘆かわしいのは以前あれほど
叫ばれていた政経不可分の原則が崩れてロシアに産業界の進出が著しくなって
折からの原油高に沸く彼らを喜ばせている事だ。戦後ソ連の極悪非道の行いに
一遍の謝罪と弁償も無く、そのような国家や人間として付き合わねばと思う。