隠居の独り言(330)

現代社会では会社を設立や仕事上の金銭貸借には担保として保証金が必要だが、
戦国時代の各大名の関係では同盟、降伏、和親、主従などの保証の担保として
人質が多く利用された。人質は古くは「むかわり」と言われ血筋の濃い肉親や
重要な家臣を相手側に送り心の潔白を保証するもので、その命を担保にされる。
人質はこちらの違約や相手の都合次第によって何時でも殺される運命にあった。
戦国の人質にまつわるエピソードは数多く残されているが徳川家康も幼少の頃、
今川家に11年も預けられたし、関が原の時のガラシャ夫人は石田三成の人質を
嫌って自刃している。織田信長丹波攻めの時は明智光秀が敵城を攻めあぐねて
母親を人質に出したのに信長の命令で約束を反古にされ母親は磔になっている。
このとき信長が約束を守れば本能寺もなかっただろうし日本史は大きく変わる。
NHK大河ドラマ風林火山の「薄幸のヒロイン」由布姫(柴本幸)は諏訪攻略の
後の人質として武田晴信市川亀治郎)の愛妾になる道を辿るがドラマとしては
山本勘介(内野聖陽)が家臣達の反対を押し切って晴信と由布姫を結びつける。
ともかく人質がどんなに大きく政局を動かすか家康や信長の例を見てもそうだが
由布姫だって、やがて後の武田家の跡取りとなる勝頼を生み、彼の戦法の拙さも
手伝って武田滅亡の道を辿り史実を変えていくのも、元を質せば晴信と由布姫の
出会いが原因で、二人に反対をした重臣甘利虎泰竜雷太)が正解だったのか
山本勘介が晴信に貢献をしたのが良かったか歴史を紐解けばどちらとも言えない。