隠居の独り言(335)

「人生僅か50年、下天のうちに較ぶれば、夢まぼろしの如くなり」と織田信長
本能寺で最期の能を舞って49歳の若さで天下統一を目前に無念の生涯を終えたが
その10年前に武田信玄市川亀治郎)が信長と決戦をして天下を取るべく上洛の
途中の三河野田城を包囲中に52歳で陣中死をして全国制覇の夢を全う出来なかった。
敵役の上杉謙信(ガクト)も49歳になったばかりで高血圧症で急死している。
平成の人生80年時代から考えると、とても若死にのような気がするけれど当時の
日本人の寿命は20代半ばで大半は幼児期の栄養失調や疫病で命を落としている。
貴族や大名の富裕層ならその辺りまで活躍すれば上の出来ではなかったかと思う。
生活習慣も現代とは生きるスピードも早いようで男は15歳で元服して大人になり
女も10代半ばで嫁して所帯を持ち子供を産むのが普通の習わしだったようだ。
15歳の年齢は今なら中学生で、まだ子供の遊びに夢中になっている域を出ないが
昔の人は小さい頃から実にしっかりしていたと感心してしまう。NHK大河ドラマ
風林火山では諏訪御料人、由布姫(柴本幸)が晴信の愛妾になる決心する場面だが
当時の彼女は13歳で、対する晴信は22歳だった。この若さで諸々の情勢を掴み
自らの行く末を見極めるのは立派とした言いようがない。周囲を見れば由布姫の父で
切腹させられた諏訪頼重小日向文世)は享年27歳で妻の禰々は15歳だったが
夫との生活を失い寅王丸も亡くして翌年に悲しみにくれながら世を去っている。
どちらにしても出演する俳優たちとは年代的にもイメージが違う感じがするが
現代で見る感覚と当時に生きた人達とは風潮も考え方も違っているので仕方ない。
劇中で年代的に最も近いのは当時40歳代の山本勘助内野聖陽)や板垣信方
千葉真一)などだが、そのギャップを承知でドラマを観るのも面白いと思う。