隠居の独り言(353)

NHK大河ドラマ風林火山」の幕あげの場景は武田騎馬軍団が戦場に向かう
勇壮な場面で物語に入っていくがどうやら騎馬隊は後世の人が創作したらしい。
武田信玄市川亀治郎)率いる軍勢があまりにも強かったがためにそのような
作り話ができた。武田軍団を伝える「甲陽軍鑑」にも一軍団(約1000人)で
将校クラス7-8人が馬に乗って指揮をしていたらしい。歩兵による集団戦が
主流の戦国時代では馬に乗ると矢に狙われやすく危険な事、このうえもない。
武田騎馬隊はモンゴルのチンギスハンの騎馬隊と比較する人がいるが日本の
地形は山坂が多く大平原を駆け巡った遊牧民族の騎馬隊とは比較にならない。
名軍師の山本勘助内野聖陽)も存在が定かではないし、由布姫(柴本幸)も
行跡の資料は何も無いらしい。1988年の新田次郎原作の中井貴一が演じた
大河ドラマ武田信玄では「湖衣姫こいひめ」と称されて若尾文子が演じている。
でも調べる事じたいが実も蓋もない無粋な話でドラマに水を注すので止める。
伝説では武田勝頼を生んだ母が「尋常隠れなき美人」と諏訪の地に伝えられ、
筋書きを作る小説家も戦国ロマンの気分がいやがうえにも高まっていくだろう。
今回の大河も大森寿美男の脚本によるところが多く時代背景や人物の心情など
とても良く書かれていて視聴者を画面に惹きつける情景の描写は素晴らしい。
ドラマは北条氏康(松井誠)の河越城関東管領上杉憲政市川左團次)の
大軍に包囲されて苦戦を強いられるが山本勘助は、今は上杉に仕える真田幸隆
佐々木蔵之介)と会い、武田家へ仕えるよう説得することが重要課題だった。
戦国時代→江戸時代→明治まで続いた長野県上田市の「六文銭の真田氏」の
ルーツを知る思いで感慨深いが、こんなところにも勘助の活躍があったなんて
歴史の深さと不思議を感じる。