隠居の独り言(403)

どうでもいい話になったが、朝青龍がモンゴルに帰った事は良かったと思う。
師匠である高砂親方にも背を向けて相撲そのものが嫌いになったのではないか。
神経を病んでモンゴル伝統の泥療法、温泉治療はどのようなものか知らないが
おそらく元の鞘に戻る事はあるまい。無精髭を隠さず去った姿はそれを物語る。
横綱の権威を汚したとか品位ある振る舞いが出来なかったとか人は言うけれど
日本文化の粋を集めた相撲という「国技」に外国人がほんとうに理解するのは
無理だと思う。相撲の伝統とは例えばちょんまげを結い褌を付け外出する時も
和服を着てセッタを履くのは現役力士のキマリだが日本人なら違和感が無くも
外国人にとっては気持ちの中の拒絶感は相当なものに違いない。それが理由か
横綱朝青龍は憎いほど悪役に徹した。花道で座布団蹴飛ばす、反則負けをする、
稽古で下の者に怪我させる、懸賞を手にして客席を睨み付ける、巡業さぼって
サッカーをやる、でもそれはそれでいいだろう。悪玉キャラクターは反面にいい
話題を投げかけてくれた。彼が相撲界を去っても力士にはモンゴル人は多いが
人種的には日本人にとても近いらしい。赤子の時の尻の青いのは世界の中でも
モンゴル人と日本人だけらしいが両国民は互いに顔の形や姿格好も似ているし
古代に遡れば縄文人の住む日本列島に移り住んだ弥生人はモンゴル人の先祖の
気がしてならない。源義経が生き延びてジンギスハンになった仮説も面白い。
そんな親近感を持って見ても朝青龍の今の職場放棄に近い行動はいただけない。
蒼い大空とどこまでも続く雄大な草原に育った彼が排気ガスと騒音の充満する
東京の下町の片隅に住むのはいくら名誉と金のためでも苦痛だったのだろう。
しかし彼は困難を乗り越えて成功した。横綱という最高地位にも登り詰めたし
巨万の富も手にしたし、もういいではないか。文句を言ったら罰が当たる。
一人横綱時代の彼が相撲界を支えた功績は大きいし私たちは感謝している。
今後は一人の私人に還って日本とモンゴルの友好に尽くしてほしいと思う。
朝青龍の明日に期待したい。