隠居の独り言(434)

ヨボセヨ(もしもし)と携帯から呼びかける着信通知は82から始まるので韓国と
すぐに分かるが、かの地では電話料金が驚くほど安いので気楽に掛けられるそうだ。
商売の電話はともかくとして日本は何故か韓流ブームで韓国ドラマが流行っている。
ブームのキッカケはヨン様ことぺ・ヨンジュン主演の「冬のソナタ」の大ヒットで
筋書きは清らかで、はかない恋の物語。自分は映画の全編を通して見ていないので
多くは言えないが恋人との会話は携帯電話が多いらしい。現代では恋の形態も昔と
随分と変わってしまっている。メールや電話で思っている気持ちをその場その時に
ストレートに恋人に伝えられる。便利な半面に危険な事も含まれているのは事実と
しても、そんなに簡単に心が通じ合えるものなのか。ひと昔前までは好きな人との
やりとりや連絡は恋文が通信手段だったはずで恋人が近くに住んでいながら今度は
いつ会えるか分からずに虚しい日を送った経験は中高年なら誰でも持っている。
手紙を書くにも文章による気持ちの伝え方、起承転結がしっかりしているとか、
何度も読み返し、失敗しては破り捨て一通の手紙にも心証を込めたものだった。
平安の昔から恋する気持ちを詩に託し、どれほど作文に苦労したかわからない。
しかも手紙を出しても家人に見つかれば必ず恋人の手元に届く保証も無かったし
返しの手紙を一日千秋の思いで待ち焦がれた。なかには交際が一方通行の手紙で
終わった悲しいこともあった。待つ事がいかに美しく恋とはそれほど大切なもので
中身の濃いのが動物とは違った人間の愛であり恋の本質であると思う。携帯電話は
仕事などでは短期間に成果が求められ、メールでも一瞬で成り立つ事も多くなった。
でも恋に関して言えばそんなに急いでいいのだろうか。昨年に大ヒットした映画の
「ALWAYS三丁目の夕日」はゆっくりとした時間の流れがいかに貴重だったか
今に気付き、そして生きる基本を見つけたから興行が成功したのだろう。