隠居の独り言(446)

司馬遼太郎の対談集に「もし戦国時代に生まれていたらどの武将に仕えたい」の
語り掛けに遼太郎は「最もいいのは若い頃の秀吉、生涯を仕えたいのは信玄」の
言葉があって戦国武将達の力量や魅力を語っている。信玄(市川亀治郎)の言に
「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」があるが家来に対して
情けが深かったという。それは部下を信頼して本拠地の甲府に城を作らなかった。
家来が出動して浮かぬ顔をしていると必ず質問したという「どうした?」家来は
「母の具合が悪いものですから」「それはいけない。すぐに戻れ。母君をきちんと
看病の手配をして出動してこい」家来たちの殆どが感激して信玄に心から仕えたが
信玄に言わせれば「たとえ私事でも屈託があったら仕事に身が入らないし、周りの
者も気が滅入る。仕事も大切だがまず私事を解決すること」信玄の部下への愛情の
示し方で人心掌握術にかけては当時の戦国大名の中でも飛びぬけて上手かった。
徳川家康は後に信玄の部下を傘下に加え彼の人心術を学び関が原で天下を取った。
関東管領を継いだはずの上杉政虎Gackt:ガクト)はカリスマ的なものはあるが
部下への態度は峻烈で自分が気に入らないと少しのミスも許さない。関東攻略も
成田長泰(利重剛)をはじめ味方する武将達が次々と離れて結局は失敗に終わる。
関東に懲りた政虎は愈々武田との決戦と、その目は川中島に注ぐようになっていく。
山本勘助内野聖陽)も戦いが近い事を悟り、養女のリツ(前田亜季)に香坂弾正
田中幸太朗)との祝言を勧める。戦国時代のなかでも最も熾烈な戦いといわれた
第4次川中島の合戦が刻々と機が熟してきた。NHK大河ドラマ風林火山」の
クライマックスシーンはすぐそこに待っている。