隠居の独り言(487)

戦国時代は「下克上」の混乱期を経て、室町時代守護大名として残ったのは
甲斐の武田家と今回のNHK大河ドラマ篤姫」の島津家だけで鎌倉体制からの
名門であった。俗に「島津800年」というが、甲斐武田は勝頼の時代に織田信長
滅ぼされたので、さらに下って江戸時代から幕末にかけて鎌倉以来の大名といえば
島津家一軒のみで江戸初期の全国の大名達は「出来星」ばかりで、徳川と云えども
例外ではない。そんな素晴らしい名門家系の上「島津に暗君、醜相なし」といわれ
代々、見事なほどの頭脳家系で例外なく賢明な当主が続いて800年もの長い年月を
薩摩の近隣を治めたし、現代に残る肖像画や写真を見ると、どの殿様も目鼻立ちの
はっきりした秀麗な顔立ちで島津のDNAは阿呆が相場の江戸の殿様の中にあって
いっそう目立ったに違いない。作家司馬遼太郎曰く治乱興亡800年を通じ、その間
これほどの隆盛を示した家は世界の中でも日本と英国の王室を除いて皆無だという。
その島津の典型的美男子で頭脳明晰な斉彬(高橋英樹)が幕末に薩摩を治めたのは
日本の歴史の不思議なめぐり合わせとしか言いようがない。幕末での新しい時代の
発火点は薩摩と長州だが、底辺にあるのは薩摩の確固たる軍事力と先見の行動力で
日本は鎖国から開国へと坂を下るように変遷していく。劇は於一(宮崎あおい)を
養女にしたいとの斉彬の要請に、その事を知った尚五郎(瑛太)は、於一と夫婦に
なることが決して叶わないのを悟り自暴自棄に陥るが、西郷吉之助(小澤征悦)の
祝言に招かれた尚五郎は思い余って泣き崩れるが、吉之助の温かさに励まされる。
何年後の維新の立役者になった尚五郎(後の小松帯刀)や吉之助(後の西郷隆盛)や
正助(原田泰造・後の大久保利通)の若かき日々の、生きざまがドラマになって
興味が尽きず、なかなか面白い。