隠居の独り言(490)

嘉永6年(1853)5月にペリー率いる黒船が何の前触れも無く薩摩藩統治下の
沖縄に星条旗を掲げて表れた。目的はアメリカが沖縄列島を植民地にして当時
盛んだった捕鯨船の食糧や水の補給基地を作るためだったらしいが沖縄政庁は
ペリーを体よく断わった。彼らが江戸湾浦賀にやって来る二ヶ月前のことだ。
NHK大河ドラマ篤姫」で斉彬(高橋英樹)が薩摩藩主になった二年後の事で
江戸は大騒ぎになって、武士から町人まで収拾がつかず引越しする者まで現れたり
物価が高騰する事態になったが薩摩は冷静に事を収めたのはインターナショナルな
感覚があったからだろう。ペリーの来航は幕府に開国を求めると共に交渉決裂なら
いつでも戦うと既に砲門を陸に向けて火を吹けるように準備してからの砲艦外交
当時の弱肉強食の国際社会の掟のようなものだった。斉彬は来るべき開国の気分を
察知して藩主に就任するや藩の富国強兵に努め洋式造船、溶鉱炉の建設、地雷、
水雷・ガラス・ガス灯等の製造の事業を興したり、ほかには日の丸を日本船の
旗印にすべきだと幕府に献策して正規に採用され現在の国旗の基になっている。
ドラマで於一(宮崎あおい)は、菊本(佐々木すみ江)の自害に激しいショックを
受けるが菊本の一途な思いを改めて知って斉彬の養女になることの重大さを考える。
身分制度の厳しかった時代は上に立つ家柄の人は高い道徳と教養が求められるのは
当然としても現代のモラルからは想像も出来ないほどの役目が心底に浸透していた。
黒船騒ぎの鎖国から開国に向かう時代背景のなかで幕府首脳陣は対処に苦慮するが
攘夷論者たちの主張も世界情勢から見れば、所詮コップの中のざわめきに過ぎない。