隠居の独り言(491)

先日NHK衛星TVで「岩谷時子の愛の賛歌」が放映されていたが、今更ながら
彼女の昭和のポップスや歌謡界を彩った作詞家・岩谷時子の偉大さが思い浮かぶ。
越路吹雪が死去するまでの約30年間の歌の作詞やマネージャーとして越路と強い
信頼関係で支えて続けたのを始め、ザ・ピーナッツ加山雄三布施明、園まり、
フランク永井郷ひろみ本田美奈子等々の歌手たちの名声は岩谷時子なくして
ありえなかったし、作曲家の宮川泰いずみたく筒美京平吉田正等も彼女と
コンビを組んで昭和のヒット作を次々と生み出したし、ミュージカルにも造形深く
王様と私、ウエストサイド物語、レ・ミレザブル、ミス・サイゴン赤毛のアン
訳詩、作詞したのは1000曲を遥かに超えたが、彼女の文才とそのバイタリティは
どこから生まれたのだろう。中で越路がシャンソンの名曲「人生は過ぎていく」を
歌っていたが、嫉妬に苦しむ女心を越路の歌唱力と演技力は鬼気迫るものがあり
歌詞の素晴らしさは鑑賞した誰もが胸を打つ。岩谷時子は生涯を独身で貫いたが、
女性ならではの情感と感性は、ある時は清純な乙女であり、ある時は情婦のような
爛れた官能を感じる。見終わって感じたことは、岩谷時子が活躍した昭和の時代は
いい歌が生まれ、いい歌手が育ち、今に思えば音楽史上の燦然たる時代でもあった。
昭和は遠く去っても名曲の数々を生み出した華やかな舞台裏で作詞という屋台骨の
偉大さは永遠に消えるものではない。昨年に鬼籍に入った阿久悠と共に良き歌詞の
数々を彩った不世出の岩谷さんは今年91歳の元気な姿で人生を振り返られている
映像に思わず拍手した。