隠居の独り言(497)

バルカン半島はヨーロッパの火薬庫だといわれて久しいが先日その中心部の
コソボセルビアから一方的に独立宣言した。ここは多くの民族の雑居する
モザイク模様の土地だが、18世紀にはオスマントルコ支配下に置かれ、
その後オーストリアハンガリーが治め、大戦後はユーゴスラビア連邦
出来たがカリスマ的な指導者のチトーの死去で崩壊する。先日の報道番組で
オーストリアハプスブルク家の子孫だという人が「私はヨーロッパ人だ」と
語っていたが、その見方は多様な民族を包み込んだ欧州連合EUは、かつての
オーストリア・ハンガリー帝国の骨組みそのもので、結局は19世紀頃に戻った
感じで、各々の国家や民族の意見の相違はあっても大同小異の下でのEU帝国と
いう将来の国家連合体の始まりなのだろう。でもこのほどのコソボ独立に対して
最も激しく反発しているのがセルビアで、そのバックにはロシアという構図は
19世紀の頃と同じパターンで「歴史は繰り返される」の言葉が思い浮かばれる。
第一次世界大戦の発火点になったサラエボ事件オーストリア帝国の皇太子暗殺の
犯人はセルビア民族主義者だったが現代風に言えば数人のテロリストの仕業だ。
コソボ独立はセルビアにいわせれば米国とEUの陰謀であるし、ロシアにとっては
法的根拠は何も無いと言っている。EUの中でも民族運動の火種を抱えるスペイン、
ルーマニアコソボ承認に難色を示しているしロシアは勿論、中近東、アフリカ、
アジアの中国やインドネシアも国内での民族間の紛争が絶えないのは、単一民族
我が国では想像外の事だろう。かつては日本も朝鮮半島を併合した時期もあったが
半世紀を過ぎた今になっても朝鮮の人に怨まれて続けている。多数を占める民族が
少数民族を迫害するのは、もっての他だが異民族との共存の難しさをコソボ問題は
改めて知らしめてくれる。21世紀の世界の文明は未曾有の発展を遂げ諸々の情報が
リアルタイムで飛び交うグローバルな時代になっても国家、宗教、民族、格差等々の
紛争の種は絶える事はないし、一民族一国家は最も理想的で終極の平和なのだろうが
国家の心に潜む野望という悪魔が消えないかぎり達成するのは不可能だろう。