隠居の独り言(498)

昨日の福田内閣メールマガジン第21号によると「日本経済全体を見るとここ数年
好調な輸出などに助けられて、成長を続けています。企業部門では、不良債権など
バブルの後遺症もようやく解消し、実際は大企業を中心としてバブル期をも上回る、
これまでで最高の利益を上げるまでになっています・・・・だからこそ私は今こそ、
改革の果実が給与として国民に還元されるべきときがやってきていると思います。
今まさに春闘の季節。給与のあり方などについて労使の話し合いが行われています。
企業にとっても、給与を増やすことによって消費が増えれば、経済全体が拡大し、
より大きな利益を上げることにもつながります。企業と家計は車の両輪。こうした
給与引き上げの必要性は、経済界も同じように考えておられるはずです・・」
最近の原油穀物の世界的な高騰の影響でじわりと物価高が起こり、国民の家計に
負担が掛かっているのは厳しい現実だがそれだからって国民の大半を占める中小や
零細企業に働く人たちにとって景気の先行きが見えない現状では収入アップを望む
声はあっても実際的には無理な話だ。おりしも自動車産業大手トヨタの労使交渉で
賃金のUPが妥結したそうだが、それは増収増益を続ける輸出産業の大企業の話で
たとえトヨタでも下請け、孫請け、曾孫請けになれば儲けた恩恵は受けられない。
メールマガジンは大企業の労働組合だけを喜ばせるだけではないか。マガジンの
フレーズは「果実を分かち合う、福田康夫です」だが首相はどこを見ているのか。
「木を見て森を見ず」の格言は派手な物ばかりに目がいって声の高い者ばかりに
同調する言葉だが、福田内閣支持率の下がった原因は景気や外交の先が見えない
苛立ちと風見鶏のように何もしない政策が国民の支持を失う背景ではなかろうか。
口では偉そうな事を言っても、やはり政治家にはシモジモの生活苦が分からない。
高度成長期に池田勇人は「所得倍増」を掲げたが安定成長期の現在にインフレの
要因ともなる一部の賃上げは弱者との格差を広げる時代錯誤の考えとしか解せない。
首相は経済学者ではないのだから労使の事に口出ししないほうがいい。賃金格差、
企業間格差や構造的不況の問題に政治が手を付けるのが先で、この影響力の強い
「首相発言」には首をかしげる