隠居の独り言(521)

西洋の貴族と、日本の貴族(大名)との決定的な違いは、領地を保有していたか
いなかった事で西洋の場合は土地から領民の生存権まで全て貴族の所有物だった。
大名をはじめ武士達は原則として幕府から拝借している土地・屋敷であり個人が
所有しているものではない。士農工商身分制度は厳然としてあったが、土地に
関しては農工商の人たちの所有物であり、大名・武士等の持っているのは年貢の
徴収権だけで江戸時代を通じて大名の配置換えは頻繁に行なわれたが、その度に
家臣団は殿様と共に移転しても、当然の事ながら農民や土地はそのままだった。
「土地は公儀のもの、百姓は公儀の百姓」の概念で大名・武士は各々の領地の
平和維持の役割を果たす「役」であって私欲は恥とされ武士道の基本であった。
幕末の開国・攘夷の両論もそれぞれが自らの主義主張で命を賭して貫いたのも
私欲を捨てた純粋さであり維新の業績は西洋の革命とは違った意味合いを持つ
道義を重んじた武士道としての革命であったといえる。例えばフランス革命
人口2000万人のうちの1割の200万人の民衆が犠牲になり、ロシア革命では
数知れずの大衆が命を落としたが、武士の革命は民衆には迷惑を掛けなかった。
その武士の後裔たる今の政治家や官僚は利権や天下りなど金欲、物欲に明け暮れ
庶民を欺く悪辣さは先輩達が築いてきた武士道の精神から大きく外れるものだ。
NHK大河ドラマは斉彬(高橋英樹)の健康が回復し、篤姫宮崎あおい)の
御台所の件は大詰めを迎えようとしていた。生まれつきの精神欠陥を持つ家定
堺雅人)は本寿院(高畑淳子)の強い勧めにも「遊び」に話をそらし続ける。
婚約に強硬に反対している攘夷の首領たる斉昭(江守徹)を説得するために
斉彬は花見を口実に斉昭を薩摩藩邸に招き篤姫を直に会わせるが、水戸光圀
編纂したといわれる大日本史を糧に斉昭と篤姫が論戦するのもドラマの見所だ。