隠居の独り言(529)

NHK大河ドラマ篤姫」は13代将軍・家定(堺雅人)との婚礼を間近に控えて、
篤姫宮崎あおい)は愈々江戸城に入るが、大奥の広さや、豪華絢爛な調度の数々、
膨大な数の奥女中を見て、篤姫には全てが新しく驚くことばかりの連続であった。
先日、江戸東京博で「慶長十三年江戸図」の城の図面を見てその緻密さに驚いた。
本丸の正面は南に面し、その西が大広間で北に延び白書院に達しているのが有名な
「松の廊下」だが、その先には最も格式の高い「本丸大広間」の御殿に続いている。
ここは将軍が勅使や、外国の使臣を迎えたり、正月の諸大名の謁見などが行われる。
本丸大広間の奥には、中奥があり将軍が日常的に過ごす部屋で、その中心の部分が
「御座の間」であり、昼間は執務室で幕府の重役や実力者たちが政治等を司った。
三代将軍家光の頃には幕府の体制も固まり政務が増加したので、新たに将軍のため
「御休息の間」が建てられて中奥の御殿屋敷が出来上がっていく。その中央あたりの
東西の線から北の部分が大奥で面積は全体の半分を占めていたという。その大奥とは
将軍の夫人である御台所のためのものであり、そこに住む女性は御台所を頂点として
上臈・中臈を始めとする奥女中やその下で働く大勢の女性で占められ原則的に男性は
将軍以外は入れない。将軍が大奥に渡るときは「御休息の間」から奥に延びている
「御鈴の廊下」から入り将軍の寝室の「御小座敷」で休んだという。側を務めるのは
原則は御台所だが、由緒ある家柄の子女で比較的器量のいい奥女中の中臈が閨を務め
子供を儲けると側室として別の部屋が与えられた。厳しい上下関係があり閉じられた
女性だけの世界は想像を絶するが、どんな気持ちで彼女達は過ごしていたのだろうか。
ドラマは家定の生母・本寿院(高畑淳子)や御年寄の滝山(稲森いずみ)たちと会い
しきたりなどに戸惑う日々が続くが、肝心の夫となる家定に会う機会が訪れない。
しかも家定には側室・お志賀(鶴田真由)がいることも知るが、ある日のこと篤姫
大奥の庭でかくれんぼをして遊んでいる男を見かけ、しかも女中達には「公方様」と
呼ばれていた。