隠居の独り言(530)

後期高齢者保険制度」は実に評判が悪い。制度そのものは納得出来るが
原因は「後期」の名称と、75歳以上という年齢の区切りを付けたことで、
それでなくても老いの寂しさを感じているのに、役人が人生の最後通牒
突きつけたようなものだ。人はそれぞれに生きている。老いてなお盛んに
活躍している人もいれば若くして無念にも病に倒れる人がいるのも現実だ。
十把一絡に何歳から前期とか後期とかに分けるのは人それぞれの人生観を
枠の中に嵌めている制度としか思えない。昨今の日本は「老い」が嫌われ
「若さ」が良いとされる風潮が強いが、その若さ至上主義が当然のように
考えてくると高齢者の比率がますます高まってくる将来にわたって日本の
社会のイメージが暗く貧しいものになっていく。つまり老若をはっきりと
分けるのがいけないのであって年齢を超えた生活の共通意識を感じてこそ
明るい日々が開けるのではないか。少子高齢化とは、すなわち老人が多い
社会の出現だが、それを殊更問題視して報道関係のネガティブな物言いが
多いのはいただけない。働く世代が退職者や高齢者を面倒見る福祉社会の
充実を叫んでいるがマスコミ始め有識者の先生方も本当の意味での高齢を
経験したわけじゃないから発言の内容も理屈が先走って、いかがなものか。
高齢になって初めて分かる人生観の味や分別はそこに達してようやく達観し
経験や薀蓄を積み重ねた人生の先輩に「後期高齢者」とは失礼ではないか。
まわりの家族の実態を見ればよく分かるが、爺さんや婆さんが子供や孫に
小遣いという名の経済援助をしてもらっているのが多いのは話が正反対だ。
加えて今の高齢者は年金がしっかりしているし貯金も若い者よりはるかに
多く持っている。無論、人生はそれぞれだから現在で持ち家も貯蓄も無く
年金も充分に貰えない老人には政治がきちんと責任を取らねばならないが
ともかく「高齢者=弱者」というレッテルだけは張ってもらいたくない。