隠居の独り言(544)

NHK大河ドラマ篤姫」今の渦中は将軍継嗣問題だが家定(堺雅人)の跡目は、
一橋慶喜平岳大)と徳川慶福松田翔太)の二人の争いで篤姫宮崎あおい)は
父・島津斉彬高橋英樹)と共に慶喜を押していたが老中阿部(草刈正雄)の死で
14代将軍になる可能性は絶えたといっていい。継嗣の徳川家の血を濃く引く人物は
御三家からだが筆頭の尾張藩に嫡子が無く、紀州藩徳川慶福か、水戸藩の息子で
御三卿一橋慶喜しかいない。では篤姫の推す慶喜の人物像はどうだったのか。
彼は水戸藩主・斉昭(江守徹)の7男として生まれ、聡明で文武両道にも優れ、
他の大名達からも相当に期待された。現存する慶喜の書や絵を見てもその才覚は
非凡な英傑の貴公子そのものが伺える。ただ慶喜に一つの難点を言えば、持てる
才能を生かせる政治的な野心に欠けていた事だった。そのうえ慶喜を次期将軍に
推す張本人の父・斉昭が傍の人たちに煙たがられ嫌われていたのも致命的だった。
斉昭の性格的な頑固さ、極端な攘夷論の考え方、強引な節約の押し付け等の他に
女色にも卑し過ぎるほどで、大奥に入り女官を手篭めにしようとした事もあって
その性行のために大奥の女性から毛虫のように嫌われ、政治生命にまで響いた。
斉昭に分別があり島津斉彬のような世界観があったなら今の時点で、すんなりと
慶喜が14代将軍になったかもしれず日本の歴史は大いに開けていたに違いない。
歴史の皮肉は慶喜が将軍になった10年後の内外の情勢は幕府に味方しなかった。
ドラマは家定がアメリカのハリスとの会見を無事に行なえるかどうかだが篤姫
計らいで何と終えて愁眉を開く家定を尻目に大奥では母の本寿院(高畑淳子)が
篤姫への反感を募らせていた。篤姫慶喜を会見場に同席させていたことを知って
本寿院はついに怒りを爆発させ嫁と姑の関係は決定的に決裂してしまう。