隠居の独り言(559)

一年は早いもので大河ドラマ篤姫」も前半を終え愈々後半に入っていくが、
先週の徳川家定島津斉彬の死で後半のドラマに見られないのは淋しい限りだ。
史実は変えようがないが、今回の大河の多くのキャスティングのなかで最高の
はまり役だったのは家定役の堺雅人と斉彬役の高橋英樹で人物像や年齢的にも
合っていたし演技力もご両人は実にうまかった。点数を付ければ満点以上だが
もう彼らの出番が無いのは、何だかドラマが終わったようで気が抜けてくる。
歴史上の人物はイメージがあるからキャスティングは難しく、私の独断と偏見で
言わせてもらえば、前半の配役で良かったのは父・忠剛の長塚京三、母・お幸の
樋口可南子、西郷の小澤征悦、尚五郎の瑛太、近衛の春風亭小朝、幾島の松坂慶子
斉昭の江守徹、滝山の稲森いずみ、お志賀の鶴田真由等がイメージに合っていた。
主役の篤姫の前半での宮崎あおいは、いまひとつの感じでファニーフェイスの
愛くるしさは茶の間の人気者だが、じゃじゃ馬的な演技が多く御台所としての
格式と女性としての知性と品性が求められる篤姫という人物像には物足りない。
天璋院になってからの徳川家と薩摩のやりとりの歴史の舞台に期待している。
大久保のイメージでは原田泰造もやや違う感じだし、井伊直弼役の中村梅雀
もう少しスケールの大きい役者を出してほしかった。大河の場合は、この種の
役柄と役者の年齢も気になるところだが、例えば慶福が家茂となり将軍になる
時は13歳で、21歳で没するまでを23歳の松田翔太が演ずるのは無理がある。
篤姫が落飾して天璋院になったのは23歳の時で、宮崎あおい22歳にとって
今が旬だが、天璋院49歳までの生涯をどのように年輪を重ねていくかが見所だ。
後半に期待しているのは久光の山口祐一郎慶喜平岳大和宮掘北真希
坂本竜馬玉木宏孝明天皇東儀秀樹あたりだが、はまり役は誰だろう?
古い大河ファンが一言申したいのは、ここ数年来の大河ドラマは史実をあまり
忠実に描かれていないのが気になる。一昨年の功名が辻の千代・仲間由紀恵
一豊・上川隆也は時代物の皮を被ったホームドラマだったし昨年の風林火山
勘助・内野聖陽、信玄・市川亀治郎、謙信・Gacktの三人のキャスティングは
あまりにもイメージとは程遠いものだった。今も思い出す大河ドラマ語り草の
はまり役だった大石内蔵助の長谷川一男や織田信長高橋幸治はもう出ないのか、
大河ドラマは、これからも続くだろうが歴史観をTVの映像から捉える人も多く
キャスティングを考える意味で、視聴率や人気俳優の起用もいいが、時代考証
出来るだけ重きを置いて欲しいと思う。後半の「篤姫」を期待している。