隠居の独り言(577)

NHK大河ドラマ篤姫」が初回からずっと高い視聴率を維持しているそうだ。
宮崎あおいの人気もさることながら大河特有の血なまぐさい戦闘の場面も少なく
手の届かない華やかな貴人の女性像を前面に出した事や、大奥の実像を霞ませた
演出も当ったといえる。それと大河ドラマは歴史上の出来事が主題なので男性の
ファンが多いが、女性にとって願望のような美しい上流社会を垣間見るだけでも
視聴率が上がった原因のひとつだろう。もう一つ言わせてもらえば幕末を書いた
数々の歴史本の中では、あまり大きく取り上げられなかった小松帯刀瑛太)が
主人公のように出てくる事で、あの頃を知るうえで今までには無かった事と思う。
身分制度の厳しい時代で、当時の身分の高い帯刀無くして西郷隆盛小澤征悦)、
大久保利通原田泰造)の活躍や、土佐の坂本竜馬玉木宏)の出番も無かった。
見方を変えれば幕末の全ての志士達のリーダーであり、人間的にもあらゆる面で
超えた男でありながら非情にも病に勝てず明治の栄耀栄華を知る事なく世を去る。
人間とは勝手なもので明治に成功した人たちは、随分と世話になった小松帯刀
坂本竜馬等の事は語り継がずに自分達の栄誉だけを売り物にして世間に広げた。
その帯刀を主役のように取り上げた作家・宮尾登美子歴史観が素晴らしい。
ドラマは執り行われた家茂(松田翔太)と和宮堀北真希)の婚儀であっても
大奥内にあって京風文化を頑なに守ろうとする宮側とは事がうまく運ばない。
天璋院和宮が家茂にお渡りのとき懐に短刀を忍ばせていたとの疑惑を聞くが
真相を問いただす滝山(稲森いずみ)に対し観行院(若村麻由美)や庭田嗣子
中村メイコ)は事実無根と激高するが和宮だけは何も答えようとしない・・・