隠居の独り言(581)

サンマの美味しい季節がやってきた。東京・目黒では「目黒サンマ祭り」があり
今年は9月7日だが、昨年は出掛けて楽しかった出来事を思い出す。目黒一帯は
凄い人だかりで一面サンマの煙でむせかえりそうな商店街は盛り上がっていた。
サンマは産地の岩手県宮古市から無料提供され、おまけにサンマに欠かせない
スダチ徳島県神山町から無料提供ということで炭焼きと生を配布していたが
長い行列をして一人が三匹のサンマを頂戴して帰った。平成7年から始まった
イベントのきっかけは落語「目黒のさんま」で、目黒の良さとサンマの良さの
PRで今年もTVで放映されたが今では目黒の一大イベントのようになっている。
頃は江戸時代に雲州松江18万石の松平出羽守が目黒不動に参拝に出かけて帰り道、
おなかが空いたので「何か食べるものはないか」と家来に命じたら近所の農家から
サンマの焼きたてを持ってきた。とにかく殿様がこんな美味しいものを食べたのは
生まれて初めてと大感激、それが自慢したくてしょうがない。世の中は天下泰平で
江戸城の殿中は無駄話ばかりで、出羽守は隣に座った福岡の黒田筑前守に向かって
貴殿はサンマという魚をご存知か?あれほど旨いものはこの世にないでしょうなぁ・
筑前守は知らなかったから悔しくてしょうがない。屋敷に帰ると早速家来に命じて
サンマを買ってまいれ、とおっしゃる。料理人は殿様のお食事というのでサンマの
脂っけを落として冷めたものを差し上げたところ、当たり前だが美味しくない・・
翌日、殿中でこの二人が顔を合わせる。筑前守は出羽守にサンマなんか、ちっとも
旨くない、嘘を言っちゃいけないよと文句を付けるが出羽守も負けちゃいない、
貴殿はそのサンマをどこから手に入れなすった?なに?房州から?そりゃダメだ。
サンマは目黒に限る!・・と、ここまでが名作落語のあらすじだが今年のサンマは
豊漁でスーパーでは一匹100円足らずで店頭に並んでいる。焼きたてに大根おろし
スダチ、醤油を掛けて、白いめしで口いっぱい頬張るのは食欲の秋の代表作だろう。
若い時分は七輪の火で、煙もうもう、バタバタとウチワで焼いたものだったが・・