隠居の独り言(623)

NHK大河ドラマ篤姫」の最終回を見て今年2008もこれで終わった思いだが
いいものを見せてもらったと関係者一同に感謝したい。今まで大河は疎遠ぎみの
老妻も今年は日曜夜8時の時間を楽しみにしていた。我が家は夫婦揃ってTVを
見る機会はあまり無いが、ドラマを通して共通の話題を持ったのも収穫だったし
探訪の小旅行をした事も良かった。一例では緑茶の産地の静岡県で一番の茶畑は
牧の原台地だが、明治になって徳川家宗家が駿河に移った時に同行していった
家臣と家族約3万人が禄も無くなりそのために大井川西側から富士の裾野まで
開墾したのが始まりとの茶畑の壮大は遠望は当時の並々ならぬ苦労が偲ばれた。
勝てば官軍、負ければ賊軍、の言葉はこの時期に生まれたもので賊軍の徳川は
駿河に追いやられ、徳川に味方した会津は青森の寒村へ、東北諸藩は北海道へ
追放された。明治の新政府の要職は薩長始め官軍方が占めて美味しい汁を吸い、
賊軍の汚名を着せられた徳川方の藩兵達は或る者は斬られ或る者は卑しめられた。
廃藩置県の地名でも、官軍方は藩庁所在地が鹿児島市なら鹿児島県、山口市
山口県高知市高知県佐賀市佐賀県、かたや賊方は、会津市は福島県
一部に、姫路市兵庫県の一部等々に編入されこの名残は今にまで至っている。
大河は歴史上の人物のイメージが各人にあるので上手く嵌まった時と外れた時の
落差は非常に大きいと思う。今年の大河成功の要因は数々だが、ここ数年の中では
登場する人物と俳優とはイメージ的にキャスティングが最も良かったのではないか。
宮崎あおい篤姫をはじめ薩摩の長塚京三の父、樋口可南子の母、高橋英樹の斉彬、
山口祐一郎の久光、瑛太小松帯刀小澤征悦西郷隆盛、後半の京都・江戸では
松坂慶子の幾島、堺雅人の家定、稲森いずみの滝山、堀北真希和宮平岳大慶喜
等々の、いわゆる「はまり役」のキャスティングが実に多く見られたのが良かった。
大河という一年を掛けた今回のドラマでも幕末を語る一握りでしかないが、歴史とは
時代に存在した何億の人生が積め込まれた壮大な世界であり、とても語りきれない。
九州南端の薩摩の田舎に生まれた一人の女性が本人も思いもよらない人生を歩むが
時代に流されつつも一本の筋の通った女の生き方が視聴者の共通した感動を生んだ。
江戸城を出た天璋院は一橋家の下屋敷を皮切りに次々と住まいを変えていくが都度
家臣、女中の数を減らし家財を始末していく・・・さらに幾星霜が流れ、親しき人達が
むごいように世を去っていくのは篤姫の生きる役目の終わりを告げているのだろうか。
徳川家達の第一子誕生を見届けて安心をしたか秋の日の午後、一橋家の居間で倒れ
昏睡状態に陥り、そのまま明治16年11月20日、家達を始め徳川一族の見守る中で
波乱の49年の生涯を閉じた。いつも平和な世を願っていた篤姫の意思は残念ながら
その後の日本は明治から昭和の拡張路線で戦争の世紀に巻き込まれ果たせなかったが
太平洋戦争の敗戦でやっと望みが叶えられたのではないか・・天璋院篤姫が夢見た
日本の平和をこれからも大切にしたいものと思う。了。