隠居の独り言(628)

麻生首相は100年に一度の不況だという。では100年前の生活はどうだったのか。
自分の生まれた75年前は世界大恐慌の余波で世界各国は保護主義に走り、ために
日本も失業者が続出し折からの天災で農家も飢餓状態になり東北地方では娘たちを
遊郭へ売ったとかの甚大な影響を受けている。今と違い電話もTVも自動車も無い
当時の様子は想像も出来ないが、それでも人々は耐えて日々の暮らしを過ごした。
第二次世界大戦の遠因はそこにあるが、その100年ぶりの不況なのかメディアの
ニュースは会社の減益減産、首切り、派遣、失業等々の暗い話題で持ちきりだが、
今の時代の飽食、文明の豊かさ、無駄な出費に慣れた日本人にはいい薬ではないか。
世界の中で未だに食べるものも無く清らかな飲み水を口に出来ない人が地球人口の
6割を占めるという。もともと食料だって石油だってろくに無い時代を暮らした
日本人が高度成長で贅沢を覚え、外国の自然まで破壊して高級食料を求めるような
アンバランスな無理が祟り、いつか破綻すると思ったが意外にも早く訪れた感じで
むしろ良かったと思っている。不況を機に日本は独自に生きる手段を考えなくては
ならないが、まず地方に活力を与える事から始めよう。地方が疲弊しているというが
若い人が都会に仕事を求め憧れも手伝って集まるからで、この際に都会で失業したり
疲れた人達は田舎に帰って休耕地や荒れた山林を耕し元通りの美しい日本の原風景に
戻す努力を払っていただきたい。周知の通り日本の食糧自給は4割にも達しないのに
農業は人手不足で生きる根本の米や野菜を作る田畑を大事にしないなんておかしい。
今までの政策は日本を一律にしようと道路や建物を優先しインフラ事業で赤字国債
生み出したが肝心の農林業を疎かにしてきた経緯があり現在もそれが続いている。
江戸時代は中央の江戸よりも、むしろ地方の藩のほうが文化や文明が発達していて
それぞれ個性があり日本の活力が地方から生まれた。それが明治になって文明開化、
富国強兵、殖産振興の国策を拠点としての中央から権力や金が流れ落ちる仕組みに
なったから地方が疲弊していく。地方で選ばれた市長や知事が年中東京にいるのは
なぜなのか?地方の活性化なんて口では何とでも言えるけれど一極集中は直らない。
どこの国だって第一次産業が発達しないと第二次産業第三次産業も成り立たない。
いつか化石燃料の石油は枯渇するだろう。今の消費からいけば100年も掛からない。
そんな100年先の日本の自給生活を今から考えなくてはならないと思う。そもそも
誰もが食料に困らない、誰もが自動車を持つ、誰もが海外旅行に行く、そんな現代は
人類社会の中で異常な時代だが、100年に一度の不況は「災いを福となす」としよう。
処方箋は自然の中で人間らしく生きた昔に帰ることだと思う。