隠居の独り言(632)

例年のごとく正月は初詣から出発したが、ここ数年はお嬢さん方の着物姿が
多く見かけるのは、清々しくとてもいいものだ。いまここにきて再び日本が
もともとあった形や姿に戻っていくのではと嬉しい予感もするがチト無理か?
戦前に生まれた自分だが、昭和の初期の日本人の服装は殆どの人の普段着が
着物で見慣れた生活の当たり前の原風景がそこにあった。家も父の出勤姿を
除いては祖父母も母も兄弟もみんな着物だったし洋服はヨソユキが主だった。
幼い頃、正月に写真館で撮った家族の記念写真はみんなが着物姿で晴々しい。
雑誌に載っている戦前の浅草の映画街のセピア色の写真も混みあった大勢の
歩いている人は着物姿に鳥打帽が殆どで当時の生活の原点を見る思いがする。
元来の着物から洋服に移っていった日本人の転換期はいつだったのだろうか。
思えば転換期は二度あったと思う。一度目は明治期の文明開化の頃で西洋に
追いつき追い越せの形を取るために男性の官吏の上役や軍隊の制服から入り
徐々に浸透していった洋服姿・・二度目の大転換期は第二次大戦後のことで
アメリカンナイズの過程で一挙に日本人は洋服を着始めて着物姿は激減した。
インドのサリー、韓国のチマチョゴリベトナムアオザイ、今も各国では
民族衣装を普段から着る習慣があるのにどうして日本人の着物が少ないのか。
今は大半の女性が着物を着るにも着付けをしてもらわないと着られないのは
情けない限りだが、気が付けば我が家も着物は箪笥の片隅から消えている。
街行く人の着物姿が美しく映るのは日本人の心の奥底のDNAの美的感覚が
残っているのか?ぜひ日本の着物文化を蘇らせたいもの・・来週は成人の日、
華やかな街の風物詩を楽しみにしている。