隠居の独り言(664)

「レキジョブーム」の続き、最近は甲冑ウエディングが流行っているそうだ。
なかでも新郎が妻夫木聡演ずる直江兼続の「愛」印兜を被るのが人気らしい。
しかし戦国の愛の観念を現代と一緒に考えるのは大いなる錯覚で愛マークは
兼続が信じた愛染明王の一字から採ったもので女房を愛するためのものでない。
今の女性の憧れの戦国武将の実際はどのような人格でどのような生活をしたか。
武将は村落の豪族の一人で自らの土地や財産を守るため、それを束ねる主君に
仕え、いざ戦いとなると鎧兜で身を固め相手を殺傷していた殺人集団といえる。
勝たねば領地や家族を守れないし、負ければ死か家族も奴隷になってしまう。
しかも圧倒的な男性社会では平気で親兄弟子供など人質として主君に差し出し
政略のためには娘は道具として嫁がせる。女性の人格や意向などは無視され
あるときは女房が戦いの場所まで赴き、亭主が殺した相手の首級を洗い清め
顔化粧をして勝った後の首実検で主君から賜る亭主の武勲の手助けまでした。
世の中はいつ襲ってくるかもしれない野武士や強盗の恐怖にさらされ侵略者に
勇敢に立ち向かう男たちに安堵し賞賛した。それは人類が世に現れた昔からの
男と女の役目分担で男はあくまで強く、女はあくまで優しいのが原理原則だ。
果たしてレキジョブームに乗る今の女性達はその背景を知っているのだろうか。
競争原理はあくまで男のものであり、女は影で支えるものとして歴史の殆どが
男達のストーリーで綴られている。20世紀も後半に入り世界的に男女同権が
時代の求めるものとして選挙権も女性に与えられ男女雇用機会均等法も施行し
女性は政治・経済に男性と同様に進出し、いまや世界には大統領も首相もいる。
報道ではアメリカは企業の中間管理職に占める女性の割合は52%と男性を抜き
日本もやがてそんな時代が来るだろう。気になるのは、近い将来に男女差の無い
淡白で味気ないものになるのか、既に粗野な男の言葉の歌手・和田アキ子には
耐えられないし、占い師・細木数子の偉そうな口ぶりには耳を塞ぎたくなる。
日本人が長年に培われてきた男と女の細やかな情感が失われる夜明けなのか?