隠居の独り言(672)

女「昨夜は・・?」男「そんな昔のことは覚えていない」女「今夜は・・?」
男「そんな先のことは分からない」周知の通り映画カサブランカの名セリフで
若い恋人同士だから絵になるが、老人の会話だと愈々の感じがしないでもない。
1933年4月16日、大阪市東区平野町の某産院でひとりの男の赤子が生まれた。
随分と母の胎内で暴れたらしく相当の難産とかで7年前に亡くなった母に対し
未だに親不孝の自責から抜けきれていない。生まれたのも難しい状況だったが
世間も難しい状況で、日本は満州事変から始まって全面的な日中戦争に突入し
奈落に堕ちる途中だったし、ヨーロッパではその年初めにドイツでヒトラー
ナチ党を率いて政権を取り、全世界に風雲が巻き起こった時期に生まれたのも
運が悪く、世の中の波乱万丈が赤子のその後の人生航路を惨めなものにした。
いまさら当時の日本指導者や軍部の愚劣さを言っても詮方ないが明治のときの
日清日露の戦争の勝利が日本人を有頂天にさせ世界の憎まれっ子になっていた。
日露戦争の時は帝政ロシアの無制限なアジア侵略は世界中から憎まれて日本は
英米などから同情を買って辛勝したが、それを学習しなかった愚かさだった。
昭和恐慌時に生まれた赤子はその後、戦争の拡大と共に戦災を逃れて関西から
東北へ疎開し食うか食わずの飢餓状態を体験したが、敗戦後は丁稚小僧を経て
帽子屋を開業し・・中略・・歳を重ねて今は孫達と平穏な日々を過ごしている。
公的機関の統計的データからいえば余命僅か2年しかないが今は予防医学との
用語があって生活習慣や病気・疾患との関連が喧しいが、おしなべて風が吹けば
桶屋が儲かる類いのもので確乎たる根拠があるわけでない。あくまで統計数字で
100歳を越して元気な人も多々いる。残りの計算は神さまにお任せすればいい。
そのような因果応報的な論を信じるより有限の時を楽しく暮らすのがなによりだ。
映画カサブランカのパート2は、男「君は何をし、何を考えていたのかな?」
女「それは聞かない約束よ」男は微笑み「君の美しい瞳に乾杯!」・昔を懐かしみ
今日もギターの弾き語りで恋の歌を歌っている・・生きた日数27394日・・