隠居の独り言(716)

「ふるさとへ廻る六部(巡礼)は気の弱り」という江戸時代の川柳があって
巡礼も歳を重ねると故郷に足が向いてしまう老いの哀しみを詠ったものだが
最近はそのせいなのか旅というと、つい関西弁を聞きたくて西方志向になる。
関西生まれといっても小さい頃の大阪暮らしだけなので近畿圏の他県の事は
殆ど知らないといっていい。健康の続く限りは歴史の詰まった滋賀・敦賀
北のほうや、風光明美紀州・熊野・伊勢の南のほうも行ってみたい・・
先週は孫を誘って大阪城と姫路城の旅をしたが孫も歴史に興味があるらしく
城に関する時代の背景や史実の成り行きなどの歴史談話に盛り上がったのは
良かった。特に姫路城の壮観の城郭景観は何度見ても飽くことを知らない。
白鷺城と呼ばれるとおり白亜聡塗りの壁の天守や櫓の美しさ、壁だけでなく
屋根の瓦の繋ぎ目にも白漆喰が盛り上げてあるので城全体が純白に見える。
その形状の美しさの中にも強さ、高さ、勢いの表現に見る者の心に何らかの
意味を伝えてやまない存在感は武士道そのものの姿ではないか、つくづく思う。
美しさへのこだわりの一つに、大手門から建物まで何重もの門扉と屈折した
道の白い壁面には○△□の鉄砲穴が随所に順序良く見られ狭間の意匠の美は
逆にその裏側に潜む銃器の暗示を連想させ本能的に怖れと凄さを感じさせる。
姫路城にまつわる語り継がれた数々の出会いのロマンもまた楽しく、反面に
城全体を設計した棟梁の人柱伝説や怪談・番町皿屋敷のお菊の悲劇は悲しい。
ともかく城郭鑑賞にかけては日本随一の醍醐味を知る。全国に城は数々あれど
華麗なる世界遺産は姫路城をおいて他に無い!改めてふるさとの有難味を思う。