隠居の独り言(730)

NHK大河ドラマ天地人は秀吉の死後、跡目相続を巡って諸大名が権謀術中の
渦の中に巻き込まれていくが、別の見方をすれば北政所富司純子)の勢力と
側室・淀君深田恭子)との女の戦いといえる。北政所尾張の出身で従って
加藤清正福島正則石原良純)ら彼女の手で育てられた諸侯は故郷の山河や
言葉を言い合う仲間だが、かたや淀君は名家出身で父は浅井長政、母は信長の
妹で美人の誉れ高かったお市だが浅井は滅亡し、その後お市が再婚した柴田も
秀吉に攻められ母は柴田と共に城で自害する。淀(お茶々)17歳の時だった。
やがて秀吉の側室となり22歳で懐妊、赤子は早世するが27歳で秀頼を生む。
ここで豊臣家では不動の立場となり御母堂と称されるようになった。ところで
淀君は近江出身で、自然に近江出の三成(小栗旬)、長束正家など武将たちの
派閥に組み込まれていく。昔から近江人は算用に長じ長束など神技に近かった。
後世に近江商人の名が天下に鳴り響くのも、何か血統的なものがあるのだろう。
秀吉が彼らを重宝したのは当然の事で覇権が大きくなるにつれ武に長けるより
国を治める才知才覚を持った器量の人が上に立つのは自然の成り行きだった。
その辺りが今まで天下統一のために命がけで戦ってきた武将たちは面白くない。
武の尾張派と文の近江派が敵対して内部分裂が始まっていく・・それを上手く
利用して北政所尾張派に近づき、戦略を持って最大限に彼らを活用したのは
徳川家康松方弘樹)で、二年後の関が原の戦いの前哨戦は既に始まっている。
果たせるかな、景勝(北村一輝)、兼続(妻夫木聡)主従は、以前から三成と
仲が良く家康に敵対していく。家康は言葉巧みに景勝に帰郷を促すが、それは
追放の意味と雌雄を決する戦いの意図が含まれていた。去るとき兼続と三成は
今後の事と再会を約したが結果的にこれが永遠の別れとなってしまう。