隠居の独り言(780)

歴史は偶然や奇遇で成り立っているが「竜馬伝」で竜馬(福山雅治)と会った
吉田松陰生瀬勝久)の生涯ほど幕末の流れを変えた人物はいないといっていい。
周知の通り長州・萩の松下村塾で学んだ塾生には、高杉晋作伊藤博文久坂玄瑞
山県有朋、等々の幕末・維新の重要な役割を演じたのは松蔭の教育に因るのが多い。
松蔭は黒船来航のとき国禁の密航を試みて失敗し紆余曲折を経て後の安政の大獄
斬首されるはめになる。日本史は巨星を落とすが、密航の時のエピソードが面白い。
8年ほど前に娘夫婦が伊豆下田に滞在したことがあり当所の歴史資料館で知ったが
松蔭は伊豆下田でペリーの軍艦に乗り込んでペリーに会うことに成功しアメリカへ
連れて欲しいと懸命に直訴したところペリーも彼の熱意に打たれ渡米を許可したが
船医が身体検査をしてこれに反対する。理由は松蔭のインキンタムシと毛ジラミで
軍艦の船員に移るおそれがあるので、やむなくペリーも松蔭の渡米を丁重に断わり
下田の奉行所へ引き渡してしまう。松蔭をはじめ志士たちの暮らしというものは、
殆ど風呂に入ることもなく、いつも着のみ着のままで身体も不潔だったに違いない。
歴史にイフは禁句だが、そのとき松蔭が清潔だったら後の松下村塾もありえないし
高杉晋作奇兵隊も、長州藩の対幕府連合軍の勝利も、薩長同盟も考えられない。
竜馬が師事した佐久間象山も松蔭の罪の連座で獄に繋がれるがこれも歴史に大きく
影響するのは周知の通りだ・・・松陰のインキンが歴史を変えた。笑い話のような
笑えない史実が存在する。歴史を紐解けばその類いの事例は無数にあるが森羅万象
偶然と偶然の組み合わせで出来ている。大河ドラマは、道場を追い出された竜馬が
桂小五郎谷原章介)と二人で松蔭と会うシーンがあるが、竜馬は江戸遊学中だし
松蔭は下田滞在中で、会ったとは考えにくい。フィクションの限界なのだろうか。
一方、土佐で武市半平太(大森南萌)が意見書を藩に提出するが上士でないために
冷遇されてしまう。そして弥太郎(香川照之)も提出するが・・