隠居の独り言(802)

大河「竜馬伝」は第二部に入ったが、視点を変えて半平太の子分・以蔵を見る。
子供の頃から独学で天才的な剣術を磨いた土佐の足軽岡田以蔵佐藤健)は
武市半平太に見出され、彼が領袖とする土佐勤皇党にも入れてもらい、仲間と
付き合える喜びに半平太を師と仰ぎ、恩義に報いるため番犬のように服従した。
しかし陰湿な殺戮嗜好の性格を持っていたのを半平太は知っていただろうか。
初めて人を殺めたのは、半平太が大阪滞在中に脱藩士を狙う土佐の探索藩士
彼の一存で斬ったが、後に半平太の意に反し狂人のように殺人者に成り果てる。
時の流れは半平太が土佐勤皇党を率い上京したころ宮中を中心に非合法政府が
出来つつあった。京には薩長土をはじめ諸国の浪士たちが集まって攘夷を唱え
反対派はたちどころに剣で倒されてしまう。いわゆる「天誅」は日常茶飯事で
以蔵だけでなく薩摩藩田中新兵衛中村半次郎と「天誅三人男」と称されて
怖れられた。共通点は無学で凶暴だが、仕える主人には絶対服従の姿勢だった。
後に土佐勤皇党は藩主・山内容堂によって召還され以蔵も捕えられ彼の自白で
半平太は切腹させられるが・・・大河の京都は完全に無警察状態になっていた。
幕府の出先機関である京都所司代奉行所などの役人達も手を出せないほどの
荒れた文久年間の京都に、多少の平和が訪れるのは長州藩が京から追い出され
歴史は松平容保が率いる会津藩士や新撰組が来るまでの数年間を待つしかない。
ドラマは京に入った竜馬(福山雅治)は難儀の末、今は三条家(池内満作)に
仕える加尾(広末涼子)を訪ねてくる。最初は拒絶する加尾だったが、結局は
兄・平井収二郎宮迫博之)の忠告を破って竜馬と一夜を過ごすことになる。
加尾にかくまわれていた竜馬は偶然に以蔵に会う。懐かしさのあまり、三人は
感激して酒盛りをするが、以蔵が殺人に手を染めていることを知って自分達が
時代の流れの中で、かつての友達として付き合えない空しさに気付いていく。