隠居の独り言(849)

ドラマ「竜馬伝」のハイライトは薩長同盟だが、劇中でのドラマチックな見せ場は
寺田屋騒動だろう。所は伏見寺田屋で、時は慶応2年1月24日丑三つ時(AM2時)
お龍(真木よう子)が入浴中に、ふと妙な事に気付いた。暗い湯殿で、もうとした
湯気が窓に流れている。誰かが窓を開けたのだろう。お龍は窓の外を見て仰天した。
裏通りに大勢の幕府の捕方の提灯が寺田屋を囲むように動いている。捕方の狙いは
二階で寝ている竜馬(福山雅治)だが、お龍は自分の裸身を忘れて湯殿を飛び出し
そのまま階段を一気に駆け上がって竜馬と三吉慎蔵に注進した。戦闘場面はTVに
譲るとして竜馬はピストルで応戦したが指を切られ重傷を負いながらも逃げおせる。
竜馬は絶対の修羅場なのに北辰一刀流の刀でなくピストルなのかそこが分からない。
お龍は命がけで近くの薩摩屋敷に走って寺田屋騒動を藩士に告げ竜馬は助けられた。
思えば幕末の志士たちのなかで竜馬ほど女性に好かれた人も少ないだろう。竜馬が
交際した女性に共通しているのは乙女姉の教育の影響で才女が好きだったようだ。
土佐の幼馴染みで初恋の平井加那(広末涼子)は書画、和歌を嗜む才女であったし
江戸遊学で修行をした千葉道場の娘・佐那(貫地谷しほり)は北辰一刀流の達人で
気立ても良かった。佐那は竜馬の死後も独身を通したが今も墓に「竜馬内」とある。
長崎で知った芸子・お元(蒼井優)は語学にも長けた芸事万遍な美女だったという。
結婚した、お龍は音曲に優れ彼女の三味線や唄でいつも忙しい竜馬は癒されていた。
艶福家には違いないが竜馬は志士によくある単純な革命家でなく、どこか温かくて
心が広いとろがあり、殺伐な殺し合いを避けるという人間味のある人生観があった。
花のある心根は男女を問わず魅せられる要素だが、彼の業績に関わる行いの殆どが
彼女たちに支えられ艶福冥利に尽きる。竜馬は英雄や革命家とかのイメージでなく
男性の繊細さと心意気を持ち合わせた、ごく一般的な庶民感覚から出たものであり
日本の歴史を大きく変えた行動と業績は芸術的ともいえる生き方をした。