隠居の独り言(858)

家に配達される新聞は読売、会社は産経で、以前はこれ以外にも駅のキヨスク
コンビニで朝日、日経、毎日、東京などランダムに買ったが、とりあえず新聞に
目を通しておけば内外のニュースの概要はつかめる。昨今はインターネットでも
見ることができるので便利な世の中になったとつくづく思う。各紙それぞれ思想、
政治、経済への考え方が違うので一紙だけ見ているとその社に洗脳されてしまう。
マスメディアがそれぞれ主張を競いあえるのは自由社会だからこそで今の日本で
暮らす幸せを思う。一面トップ記事は同工異曲だが二面三面とめくっていくうちに
各紙の方向や思想的な面が表れてとても興味深い。自分が丁寧に読むのは社説で、
出来事の背景、過去の歴史、今後の見通しなどが詳しく書かれているが、そこには
各社の記者達の力量がくっきりと出ている。社説の他に最も目を惹いて勉強になり
自分のブログの文体の参考にもさせてもらっているのは、一面の下部に載っている
各紙のコラム欄で「編集手帳」「天声人語」「余禄」「産経抄」「春秋」「筆洗」等々
各紙とも編集委員の中で選ばれた筆の立つ名文記者だけに短い文章でもリズム感や
起承転結の付け方には大いに勉強させられる。それは各紙が社運をかけて文章力を
競い合っているからで、それだけに日替り社会エッセーの名文に感嘆し頭が下がる。
コラムは普段は各紙面が別々のテーマを扱うが、一旦大きなニュースが発生すると
誰もが同じテーマを扱い、期せずして競作の趣が出るので各コラムを読み比べて、
どの社が優れているのか自分なりに評価し、勝手に点数を付けて楽しんでいる。
最近の例では9月29日付の北朝鮮将軍様世襲のニュースで冒頭から中身まで
各紙が昔の格言を引いている文章は偶然の一致なのか、比べてみると中々面白い。
朝日の天声人語は、「君は舟なり、庶人は水なり。水は舟を載せ、水は舟を覆す」・・
毎日の余禄は、「将たること三世なる者は必ず敗る」は「史記」にある言葉だ。・・
産経の産経抄は、エープリルフールが9月28日に引っ越したのかと思った。・・
読売の編集手帳は、将軍様は「売り家と唐様で書く三代目」を心配したらしい。・・
東京の筆洗も、<売家と唐様で書く三代目>という江戸川柳で、文章を纏めている。
コラムは各紙が匿名だが書き手による文章の巧拙がはっきり出るので記者たちには
毎日が試験のストレスの連続だろう。その日々の執筆の苦労は察するのに余りある。
いつも勉強させていただいている感謝とこれからの名文記者の活躍に期待している。