隠居の独り言(879)

大河ドラマ坂の上の雲」第二部が始まった。第一部が昨年暮れだったから
一年も空けて放映するのは冷めたスープを飲む思いだが司馬遼太郎の作品の
最高のスケールの大きい傑作だけに出来る事なら一年を通して見たいものだ。
ドラマの背景は日本も明治に入って佐賀の乱西南戦争の内戦のほとぼりも
収まって維新がようやく達成されていた頃、植民地主義帝国主義のはびこる
19世紀後半の東アジアで主に中国東北部満州朝鮮半島がロシアの勢力に
飲み込まれようとしていた。ロシアは既に清朝からアイグン条約や北京条約で
シベリアや沿海州を奪取しそれに飽きたらず極東での南下政策を推進していた。
清朝や朝鮮がしっかりしてくれればいいのだが、このままだと日本が危ない。
満州は既にロシアの領土化が進み日清戦争後の下関条約で自主独立を果たした
朝鮮の大韓帝国をも餌食にすべく食指が伸びていた。ドラマ「坂の上の雲」は
明治33年、秋山真之本木雅弘)は広瀬武夫藤本隆宏)とイギリスの港で
日本への回航を待つ戦艦「朝日」を見学した。今はロシア駐在武官の広瀬は
ヨーロッパ視察中で真之と久しぶりに再会し、二人は欧州40日間の旅をする。
折から1900年に義和団の乱がぼっ発し8か国が連合軍を組織して救援を待つ
北京在住の外国人救援に向かう。騎兵大佐の秋山好古阿部寛)も北京に出征。
そこでロシア兵達の略奪を目の当たりにする。事変最中に清国兵がロシア領を
襲撃したことに端を発してロシアは同地の清国人を捕縛し老若男女5000人を
黒竜江(アムール河)で虐殺した。この惨劇は清国人のみならず多くの日本人に
義憤を巻き起こしロシアの非人道的行為を糾弾する声が高まった。ロシア人の
先の大戦での残虐な蛮行も忘れる事は出来ないが彼らに流れるDNAは人間の
仕業とは思えない。一世紀前の東アジアの覇権主義の情勢は今の危険な状況と
似ているようだが。当時と根本的に違うのは、それぞれ民族の国家意識だろう。