隠居の独り言(886)

最近の年末の夜は街のあちこちにイルミネーションの飾りの家が多くなる。
歳末の風物詩ともなったクリスマスデコレーションの一環だろうが天国の
エスさんも仰天なさっているだろう。昔の歳末の玄関の飾りはお正月の
松や竹と決まっていたが昨今ではクリスマスの習慣の方が広まったようだ。
欧米にはキリスト教という大筋があって、それに対する異端は少数派だが
日本人は唯一不可侵の宗教的権威が無いからクリスマスにはキリスト教徒、
除夜の鐘を聞けば仏教徒、年が明けて初詣の新道と、めぐるましく忙しい。
私も宗教に関し実にアバウトで年が明けて近所の神社に初詣に出かけるが
何故そこに神社があり何故祀ってあるかを考えもしないし神様の御神体
尊名もとくに知ろうと思わない。生活の上で考えるより昔からその場所に
神社があった風景と捉えている。神社というのはそういうものなのだろう。
たしかに宗教施設に違いないが、それを宗教とは思わないのは昔からある
古い歴史施設として清らかな印象のほうが強いと感じているからだと思う。
最近できたピカピカの新興宗教になじめないのは伝統と厳かが無いからだ。
古い神社に歴史が沁みついている感じは旅先でも境内に足を踏み入れると
気持ちが和み心静まるのは言葉に言い表せられない清らかさがそこにある。
無宗教で罰当たりの自分でも、讃美歌を歌えば身も心も洗われる気分だし
坊主の経典を聞けば仏に神妙になり、さりとて神社を敬う信心は持っている。
宗教に対し、いい加減と思えばそれまでだが日本人のおおらかさなのだろう。
街はクリスマス商戦で活気を呈しているし神社は破魔矢や御札作りで忙しい。
日本には多くの神々が住み仲良く共存している姿を全世界に反映して欲しい。
某彫刻家の話では神社の参道の狛犬の彫刻の正面はぬかりなく作ってあるが
後ろ側を見ると何か抜けたところが多いという・・宗教そのものも後ろ姿は
案外、面白い味わいがあるのでは・・・