隠居の独り言(891)

昨年末に家の近くの某材木屋が倒産し夜逃げ同然に姿を消してしまった。
広い家に住み高級車を乗り回し材木屋はいつも金持ち風情を装っていた。
近所の商店の何軒かがツケが踏み倒されたという。どのような事情にせよ
人を騙して自らの享楽のために多くの人に迷惑を掛けた行為は許されない。
考えれば日本人のお金に対する道徳心は以前と随分と変わったように思う。
今欲しいものがあれば自分が対価を払えなくても手にしたい弱い気持ちが
借金という地獄の入り口に抵抗もなく入っていく。戦前は生きる基本たる
目標を持つということは滅多に借金をしてはいけないと親に教えられたし
ものが欲しければお金を溜めてから買いなさいと諭された。以前の風潮は
若い時分は身を削って貯金をし結婚、子育て、そして老後のために蓄えた。
将来に夢を持ち目的の哲学があれば遊びや贅沢に借金は出来るものでない。
今の風潮は例えば結婚式の費用は親が負担し家や車はローンで手に入れる。
今欲しい、待つことのできない根性の無い先取りはローンという化け物に
精神まで食いつぶされて生きる目標も個人の思想もそこで失くしてしまう。
質素倹約を旨としていた日本人のお金に対する価値観はどこへ行ったのか。
今の通念は砂の上の流行であり人の道の基本の脱落としかいいようがない。
膨大な国債残高と借金財政の国家予算が日本人の自堕落さを象徴している。
来年の予算は収入が40兆円なのに支出は92兆円、しかも政治家を先頭に
国民も不思議がらない風潮に暗然としてくる。どこの家でも金が無い時は
使わないで耐えるしかないが、政治政策は人気取りのために金をばらまき
国民の質実な精神をますます荒廃させている。日本人として情けない!