隠居の独り言(927)

現代の風俗からいえばメカケとかソバメといえば女性が男性の性的玩具として
捉えられがちだが実際はそうではない。封建社会にあって血統主義が求められ
男性優位の社会は支配者にとって男子は家の繁盛の宝であり多ければ多いほど
家は繁栄し家柄でいえば正室に嫡子が生まれれば目出度いが、それでも当時は
男の子の死亡率が高く、側室や別の女に跡継ぎを儲けさせるのが習わしだった。
側室からみれば男子が出来れば嫡子の母であり最高のステイタスでもあるので
女性にこれ以上の出世は無い。その目出度さを手にすれば側室に繋がる一族も
栄えるのは必定だった。大抵の小説は秀吉が浮気をする度に、おねと尾張弁で
大喧嘩をして嫉妬で激怒した筋書きが多いが、おねには子が出来ない寂しさは
ひとしおのものだっただろう。武家の習わしでは妻に子が出来なければ離縁の
理由となり家から追い出されても文句が言えなかった。おねの実家の浅野家は
結婚当初は秀吉より高い身分でありおねと生涯を共にしたのも糟糠の妻として
秀吉に尽くしたからこそ彼の出世の礎になった。だから秀吉は頭が上がらない。
それでも秀吉に子がいないので家臣は進んで自分の娘を秀吉の閨に差し出した。
もし秀吉とのあいだに男子を儲ければ娘一族が次の天下人になれる。前田利家
京極高吉蒲生氏郷織田信包、山名豊国、成田氏長・・錚々たる大名の娘だ。
今年の大河ドラマで気に入らないのは現代の感覚の少女マンガのような運びで
茶々(宮沢りえ)初(水川あけみ)江(上野樹里)たちが、織田信長豊川悦司)の
血統といえ今の家庭の我が侭娘のように振る舞っているのは歴史の冒涜であり
視聴者は当時の封建主義を誤って知る事になる。当時の茶々の立場からいえば
秀吉(岸谷五朗)の側室になり男子を儲け、浅井、織田家の血筋で国家を治め
関白天下の母堂として敬われるのが本音であったろう。史実は曲げられないが
作家・田淵久美子にとって三姉妹の心の憶測をどのように推測し表現するのか、
脚本も手がけた彼女の本領が試される。